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朝鮮半島における平和体制形成の可能性

2006.2.25
康仁徳 元韓国統一部長官

1.広がる北東アジア諸国間の戦略的互恵協力関係

 韓国の外交安保研究院が出版した「中期国際情勢展望」(2008−2013)は、北東アジア地域次元で韓国が直面する構造的挑戦の性格とこれを左右する主要変化要因は“変化するアメリカ(Transforming the U.S.)”、“浮上する中国(Rising China)”、“普通化する日本(Normalizing Japan)、そして“復帰するロシア(Returning Russia)”だと記述している。 筆者は、これら4強の間では全般的かつ競争的な戦略的互恵協力関係を目指しており、従ってこの先かなり安定した国際関係を維持するだろうと楽観的な見通しを持っている。
  とはいえ、4強間の覇権を目指す競争が起きないということでもなく、その過程で葛藤と対決が発生しないということでは決してない。 たとえそうであっても、アメリカを頂点とする「一超多極」の安定した構造がかなりの期間―少なくとも今後20年―壊れる可能性はないということだ。 しかし、この間に中国とロシアなど、社会主義を抜け出した「権威主義的資本主義強大国」(authoritarian capitalism powers)らが経済・軍事的にアメリカ中心の「単極的国際秩序」(UnipolarInternationaI Order)を変化させようとする努力は強化され続けるとみている。
  そうした状況下、アメリカと中国、アメリカとロシア、中国と日本、日本とロシア、ロシアと中国間で戦略的互恵協力関係が続くはずで、よって、この地域の安定基調は大きく揺らぐことはないだろう。この先かなりの期間、北東アジア域内国家間の2国間安保対話と多国間協力の枠はより活性化されるだろう。 このような協力の枠内で、各国は形式的なアジェンダ(Agenda)を扱うよりは、実質的で実践的な合意、例えば環境汚染、気候変化、疾病(SARS、鳥インフルエンザ)、自然災害と災難克服、テロ防止と大量殺傷武器の拡散防止、麻薬や偽造紙幣の闇取引防止など伝統的、非伝統的な安保問題−「人間安保」(Human Security)までを含む一広範囲な問題を解決するために協力することになるとみられる。
  特に、韓・日・中・ロ間では外国為替、エネルギー、資源のような当面する経済懸案問題を解決するための協力を強化する一方、東南アジア国家連合(ASEAN)+3首脳会談にオーストラリア、ニュージーランド、インド、アメリカなどが参加する新しい安保・経済フォーラムに拡大させるとか、モンゴル、北朝鮮などが参加する開放的な北東アジア共同体の構成のための対話開催など、地域の平和と共同繁栄のための多国間協力がより活発になると見通される。
  このような楽観的な見通しを前提にすると、未だに冷戦的対決状況から抜け出せずにいるこの地域最大の火薬庫である朝鮮半島でも必然的に時代的要求に相応する対話と協力の基盤が整うと期待される。 朝鮮戦争以降、50年間続いている休戦体制を解消し、平和体制へ転換させることは朝鮮半島の平和と安全だけでなく、北東アジア地域、ひいてはアジア全域の平和と共同繁栄に寄与する道である。このような観点から朝鮮半島における平和体制形成の可能性について筆者の見解を述べようと思う。

2.6カ国協議と朝鮮半島における平和体制形成問題

 2003年8月に中国を議長国として北京で開催された6者協議は4年間続いている。筆者はこの会談こそが朝鮮半島の平和体制形成に重要な役割を担うとみている。なぜなら、この協議の参加国が朝鮮半島における平和体制の形成に直接的な関連がある北東アジアの主要国(米・日・中・口の4強と韓国・北朝鮮)であるためだ。6者会談参加国は第2次世界大戦終了とともに朝鮮半島の分断を企て、決議した当事国、その原因を提供した植民地宗主国、ひいては朝鮮戦争に直・間接的に銃口を突き合わせて戦った参戦国である。
  この6者協議の当面の議題は言うまでもなく北朝鮮核問題を平和的に解決するための方案を導き出し、北朝鮮の核開発を完全無欠に廃棄させることである。しかし、1994年に米・朝間で合意した「ジュネーブ基本合意」が実践されなかった経験を回顧すると、今日の北朝鮮核問題の平和的解決が決して簡単なことではないことを直感する。4年間続けられた協商にもかかわらず、今ようやく北朝鮮核廃棄の初期段階に足を踏み入れたにすぎず、これさえ北朝鮮が提議した補償条件問題で約束通りに履行されずにいる。とはいえ、悲観することではない。なぜなら、米・朝両国の間で協商していた94年の時とは違って、今開催されている6カ国協議には長い間北朝鮮と防衛軍事同盟を締結していた中・ロ両国が参加しており、より均衡の取れた解決法案を模索することができ、協商過程で北朝鮮の核の完全廃棄を要求する5ケ国の共助が形成され、北朝鮮に対する圧力をさらに加えることになるためである。正にこの点が米・朝2国問会談より6者協議により大きな期待をかける主な理由である。
  筆者は過去4年間の6者協議が辛苦の末に生んだ3つの文書−2005年の「9・19共同声明」、2007年の「2・13合意書」(‘9.19共同宣言’実践のための初期段階措置合意)、同年10月の「6カ国協議合意文」(‘9.19共同宣言’実践のための第2段階措置合意)−は核開発当事者である北朝鮮とその廃棄を要求するその他5ケ国間の「均衡のとれた協商の成果」だと評価しても良い内容と見ている。 この3つの合意文を一読した人なら誰でも、北朝鮮が誠実に核廃棄に臨む場合、得られる補償は充分満足できる水準に達することを知ることになるだろう。
  特に筆者が指摘したいのは、この「3つの合意文」が提示した北朝鮮核廃棄に対する補償は単純に対称的軍事・経済補償にとどまらず、UN憲章と国際社会の普遍的規範による北朝鮮体制の安全保障まで保証しているという点である。 9・19共同宣言が額面通り実践されるなら南北、朝鮮半島において冷戦の残存物である休戦体制を平和体制へ転換し、朝鮮半島と北東アジア地域の平和と安定のための「多国間協力の枠」形成の可能性さえ見通すことができる。
  もう少し具体的に6者協議が採択した「3つの合意書」を検討し、朝鮮半島における平和体制形成の可能性を検討してみよう。
  6者協議で合意した最も基本的な土台文書である「9.19共同声明」は核廃棄に伴う経済的補償と北朝鮮体制の安全を保障するだけでなく、朝鮮半島の平和体制形成のために参加国らが実行しなければならない課題とそのプロセスを次のように記述している。
  “アメリカ合衆国は朝鮮半島に核武器を保持しておらず、核武器または在来式武器で朝鮮民主主義人民共和国を攻撃または侵攻する意志がないことを確認した”とした(第1項)。
  また「6ケ国は相互関係において、国際連合憲章の目的と原則及び国際関係で認められた規範を遵守することを約束する」とし、米・朝両国は「相互主権を尊重し、平和的に共存し、各自の政策に従って関係正常化のための措置を取ることを約束した」とした(第2項)。 また、日朝両国は「平壌宣言に従って不幸な過去と懸案事項の解決を基礎とし、関係正常化のための措置を取ることを約束した」(第2項)と記述した。
  また、北朝鮮の核摩棄の経済的補償として参加国すべてが補償責任を負い、また政治・軍事的安全を保障するための別途のフォーラムを組織し、′制度的に保証するという点を次のように約束している。
  「6ケ国はエネルギー、貿易及び投資分野での経済協力を2国及び多国間でさらに進めることを約束した。中華人民共和国、日本、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国は朝鮮民主主義人民共和国に対し、エネルギー支援を提供する意思を表明した。
  大韓民国は朝鮮民主主義人民共和国に200万Kwの電力供給に関する2005年7月12日付の提案を再確認した」(第3項)。
  「6者は北東アジアの恒久的な平和と安定のために共同で努力することを公約した。直接関連する当事国は適切な別途のフォーラムで朝鮮半島の永久的平和体制に関する協商を行う予定だ。 6者は北東アジアでの安保協力増進のための方案と手段を模索することに合意した」(第4項)。
  「9.19共同宣言」の具体的な実践を約束した「2.13合意」はもう少し具体的に「行
動対行動の原則」による実行事項を次のように合意した。
  「初期措置(寧辺の核施設の稼動停止と封印、そしてIAEAの監視、検証の受け入れなど)が履行された後、6ケ国は9.19共同声明の履行を確認し、北東アジアの安保協力増進方案の模索のための閣僚会議を迅速に開催する」(第5項)。
  「参加国は相互信頼を高めるために肯定的な措置を取り、北東アジアでの持続的な平和と安定のための共同努力を行うことを再確認した。直接関連する当事国らは適切な別途のフォーラムで朝鮮半島の恒久的な平和体制に関する協商を行う」(第6項)。
  もう一歩踏み込んで「共同声明実践のための第2段階措置」を約束した「合意文」(2
007年10月)は「U.関連国らの関係正常化」の項目で次のように記述している。
  「1.北朝鮮とアメリカは両国関係の改善及び全面的な外交関係を樹立することという約束を維持する。両国は両国間の取引を増大させ、相互信頼を増進させる。アメリカは北朝鮮をテロ支援国名簿から除く手続き及び‘敵性国交易法’(Trading with the Enemy Act)の適用を終結する手続きを開始するという約束を想起しながら、
米朝関係正常化に関する作業部会会議で到達したコンセンサス(consensus)を基礎とし、北朝鮮の行動と平行して北朝鮮に対する約束を実行する。
  2.北朝鮮と日本は平壌宣言に従って、不幸だった過去及び当面している未解決の争点に対する解決を基盤として、速やかに外交関係を正常化するために真剣に努力する。北朝鮮と日本は両国間の集中的な論議を通じて、このような目的達成のための具体的な措置を取ることを約束した。」
  また、「W.6ケ国の閣僚会議の開催に関して」では6者の外相会議を適切な時期に北京で開会することを重ねて強調しながら、「各国は外相会議の前に、この会談の議題を論議するため6ヵ国代表会議を開くことに合意した」とした。
  以上から見てみたように、6者協議で約束した通り、北朝鮮が正確かつ完全に核廃棄措置をとる場合、またその期間が早ければ早いほど、朝鮮半島の平和体制構築が可能だという事実が明らかになった。平和体制構築は既に可視圏に踏み入ったといえるだろう。

3.南北対話においての平和体制構築の論議

 一方、6カ国協議とは別途に、南北当事者間の対話においても朝鮮半島の平和体制構築問題が論議されてきた。朝鮮半島の平和体制構築問題を南北間で論議し、その実践方案に合意したのは1991年12月に開催された「南北首相会談」の時だった。この会談で採択した「南北間の和解と不可侵及び交流・協力に関する合意書」(1991.12.13)は「南北和解」、「南北不可侵」、「南北交流・協力」の3つの章で構成されている。「第1章 南北和解」の第5条は「南北は現停戦状態を南北間の強固な平和状態に転換するために共同で努力し、このような平和状態が達成される時まで現軍事停戦協定を遵守する」とし、続いて第6条は「南北は国際舞台での対決と競争を中止し、互いに協力し合って民族の尊厳と利益のために共同で努力する」と記述している。
  またこの合意書を実行するために採択した「‘南北不可侵’の履行と遵守のための付属合意書」(1992年9月17日発表)の第2章では武力不使用、紛争の平和的解決及び偶発的武力衝突の防止、不可侵境界線及び区域、軍事直通電話の設置・運用、そして南北軍事共同委員会の構成と協議問題などについての具体的な実践方案に合意している。この時に合意された中心的な問題は、停戦状態を強固な平和状態に転換するためには軍事的信頼構築だけでなく、南北間の広範囲な交流と協力が進められ、南北当局者と南北住民すべてが和解・協力が避けられないことを共感する環境が作りあげられる時に可能であり、このための経済・社会・文化・スポーツ交流と協力、そして人道的問題解決に直ちに着手しなければならないということであった。
  もしも過去15年間、南北両側が「基本合意書」実現のために漸進的、段階的、実質的
な行動をとっていたなら、今頃南北の間に平和体制形成の基盤が充分に整えられていたはずだ。この「基本合意書」以外に南北の間でもう1つの重要な合意書を採択しているが、それが「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」(1991.1.20)だった。
  しかし、遺憾ながらも南北対話36年史上最も充実した内容として作成されてきた「南北間の和解と不可侵及び交流・協力に関する合意書」と「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」は両側の首相署名のインクが乾ききる前に、北朝鮮はこの貴重な合意文を無惨に踏みにじり、隠密に核開発を続けた。 しかし、このような隠蔽された行動は長くは続かず、結局アメリカによって暴露された。その結果、北朝鮮核廃棄のための米・朝対話が開催されたのである。
  数ヶ月間の対話の末に1994年10月、米・朝間で「ジュネーブ基本合意」が調印され、
韓・米・日3ケ国が100万Kwの軽水炉2基の建設を支援することと、アメリカが年50万トンの重油提供を条件に北朝鮮は核開発を凍結することにした。 その後、韓・米・日3
ケ国はKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)を設立し、北朝鮮の咸鏡南道新浦に200万Kwの軽水炉建設に着手し、かなりの工程を進めた。けれども、このような北朝鮮核廃棄プロセスさえ、2002年10月に北朝鮮が秘密裏に推進してきた高濃縮ウラン核開発計画が暴露されることで完全に中断されてしまった。これによって、その後数年間米・朝対話と南北対話において朝鮮半島の平和体制構築問題が議題として登場することはなかった。
  そうして、再び登場したのは盧武鉉大統領が南北首脳会談を推進した2007年である。盧武鉉大統領は南北首脳会談を準備しながら、朝鮮半島の平和体制に対するアメリカの見解を打診するために、安保政策を担当する高官らを数回アメリカに送り、論議している。
  盧武鉉大統領自身も2006年11月にべトナム・ハノイ(Hanoi)で開催された韓米首脳会談でブッシュ(Bush)大統領から“朝鮮半島の平和定着に関連して、私は既に決断を下しており、南北首脳とともに朝鮮戦争を終息させるための平和協定に署名する用意がある”という言葉を直接聞いており、2007年9月にシドニー(Sydney)で開催されたAPECの韓米首脳会談でブッシュ大統領は『私の目的は朝鮮戦争を終結させるための平和協定に金正日国防委員長らと署名することであり、朝鮮戦争を終結させなければならず、終結させられる』と言及しながら、『この言葉を金正日委員長に伝えてほしい』という要請もしていた。ところが、この会談で盧武鉉大統領はブッシュ大統領の「一歩前進した見解」を誘導するためかはわからないが、「再質問」するハプニングまで起こった。
  盧武鉉大統領は『朝鮮半島の平和体制について明白に述べて欲しい』と促したのに対し、ブッシュ大統領は『核兵器の検証可能な廃棄が前提である』と答えたにもかかわらず、盧大統領は再度『金正日総書記と韓国国民がその先の話を聞きたがっている』と再質問すると、ブッシュ大統領は『これ以上どのようにはっきりと話さなければならないのか』と答えた。 盧武鉉大統領が望む「その先の話」とは「核廃棄以前であっても平和体制構築のための協議を始めることができる」というものだったが、ブッシュ大統領は最後までこの言葉を述べなかった。ブッシュ大統領は「核廃棄以前に平和体制構築論議」を望む盧武鉉大統領の見解には同意せず、「北朝鮮側が核を廃棄すれば平和協定を締結することができる」という以前からの態度を堅持したのである。
  盧武鉉大統領としては極めて不満なことだったが、アメリカの立場を無視して、金正日と平和体制構築問題を論議することはできないことだった。盧武鉉大統領は「軍事問題の論議はアメリカと論議する」という北朝鮮の既存の立場を充分に認識しながらも『韓国・北朝鮮が主導して平和体制構築問題を論議しなければならない』という自身の所信を堅持したまま、南北首脳会談に臨んだ。 彼は金正日国防委員長との首脳会談で『平和体制構築問題は朝鮮半島の非核化とともに、民族の共存共栄に直結する問題であるため、優先的に協議し解決されなければならない事項であり、・・・休戦協定体制から平和協定体制への転換問題は周辺国家に任せてはならず、分断と対決を清算しなければならない主体として、南北最高指導者がスタートを切らなければならない』と言及した。ひいては、盧大統領は『北朝鮮核問題が解決局面に進んだ時点で平和体制論議を本格化し、非核化と米朝関係の正常化の過程を推し進める必要性』を強調した。
  2007年10月4日の首脳会談を総括して発表した「南北関係の発展と平和繁栄のための
宣言」は平和体制構築に関連して次のように記述している。
  「南北は現停戦体制を終息させ、恒久的な平和体制を構築していかなければならないという認識を共にし、直接係わった3ケ国または4カ国の首脳らが朝鮮半島地域で顔を合わせ、終戦を宣言する問題を推進するために協力していくことにした。南北は朝鮮半島の核問題解決のために6者協議、9・19共同声明、2・13合意がスムーズに履行されるよう共同で努力することにした」(第4項)。
  しかし、上の合意文だけでは盧武鉉大統領が提議した『平和体制構築を推進する主体として、周辺国家に任せずに、韓国.北朝鮮が論議決定をしなければならない』という主張に金正日委員長が同意したかは明らかではない。筆者は金正日委員長の考えは依然「軍事問題は米・朝間の協議で解決する」という従来の態度を堅持し続けながら、南北間の平和体制構築論議が北朝鮮の対米協商力の強化に貢献するようにするという意味で「認識を同じくした」と合意したものと考える。
  また、筆者はこの合意文がこれまでの平和体制構築に関連する当事国の「常識」を混沌とさせる余地を生んだことを指摘せざるをえない。上の言及は平和体制構築協議に直接関連する当事国を「3ケ国または4カ国」に、そして合議場所を「朝鮮半島地域」に指定することで、9・19共同宣言の第4項で言及した「直接関連する当事国は適切な別途のフォーラム(対話場所)で朝鮮半島の恒久的な平和体制に関して協商する」とした合意をより一歩進めたように見えるが「直接関連する当事国」がどの国なのかについて、北朝鮮が新しい難題を形成する可能性を示している。
  上の合意文に記された直接関連する当事国が「4カ国」だとする場合、「米・中・韓・朝」を指すといえるが、「3ケ国」だとすると、「米・中・北」を指すのか、「米・南・北」を指すのか不明確だ。中国の場合は朝鮮戦争の休戦協定当事国として当然「直接関連する当事国」だと主張するはずで、韓国の場合は金正日委員長との対話で盧武鉉大統領が述べたように、当然「3ケ国」は「米.南・北」を意味し、結局中国は除かれるという意味だ。
  今現在、朝鮮半島の平和体制構築問題は「米・中・韓・朝」4カ国間で論議しなければならないというのが韓国当局の意志だが、北朝鮮が中国を除いた「3ケ国」(米・南・北)を主張する可能性を排除できない。
  問題は南北間の関係改善が6者協議で合意した「9・19共同声明」の着実な実践を後押しする結果にならなければならないという点である。即ち、核廃棄なくして朝鮮半島の平和体制構築を論議することができないなら、当然南北対話は核廃棄を合意した6カ国協議の合意と連動しなければならない。6カ国協議と南北関係の進展が良い方向に作用し、北朝鮮の核廃棄を促進させる結果をもたらすなら、「3ケ国」だろうが「4カ国」だろうが肯定的な結果を生むことができるはずだ。しかし、現実的に6カ国協議の道のりはまだまだ遠いようだ。 ましてや、北東アジア地域の中心部に位置した朝鮮半島の将来問題について、周辺4強間の葛藤が起きないはずだという保障は誰にもできない状況だ。
  今は、核廃棄問題より平和体制構築問題を先行させることができるだろうか、という戦略的考えで意見が分かれた状態である。南北首脳会談の共同声明を見て、6者協議と南北対話が良い方向に相互作用するはずだとはっきり言えるだろうか。 平壌の南北首脳会談が開催された正にその時、北京で第6次6者協議の2段階会議(2007.9.27−30)が開催され、北朝鮮が年内(2007年12月末まで)に2段階措置(ウラン核開発計画を含むすべての核開発計画の申告)を行うことに合意したが、年が替わった今も実践されずにいる。
  去る1月4日、北朝鮮外務省の代弁人は『我々は2段階措置のやることはすべて行った。既に11月に申告対象を作成しアメリカ側に知らせた。しかし、相手が行動対行動の原
則を守らず、約束した補償問題を誠実に遂行しないので、もろもろの措置を保留することにした』と主張するのに対し、アメリカ国務省は『まだ北朝鮮から正確で完全な核申告を受けていない。我々はこれを依然として待っている』(2008.1.5)と述べた。このようにみると、6カ国協議で合意した3つの合意書がいつ頃実現できるかは誰にも予測不可能な状況である。
  このように北朝鮮核問題が解決されないなら、アメリカは平和体制構築のためのプロセスを進めないはずであり、韓国もアメリカと行動をともにせざるを得ないだろう。従って、朝鮮半島で停戦協定を平和協定に替え、非核、平和体制を構築するための論議(協商)が始まるのはまだかなりの時間がかかりそうだ。

4.見通しと課題:平和体制形成の前提は北朝鮮核廃棄と改革・開放である

 ここまで6者協議の合意と南北対話を連係させ、朝鮮半島における平和体制構築のための新しいプロセスが進められる可能性があるのかに関して検討してみた。筆者は朝鮮半島の平和体制構築のための接近過程には北朝鮮の核問題解決以外にも難題が山積していることを指摘しようと思う。
  先ず、金正日の「先軍政治」が障害物である。金正日はいわゆる『私が信じるのは銃台のみ』だという信念のもとに、先軍政治を実施中である。既に、北朝鮮での軍隊は「党であり、国家であり、人民である」という水準にまで格上げされた。北朝鮮のマスコミは「先軍政治方式を具現してはじめて、アメリカの覇権的朝鮮侵略政策を阻止し、朝鮮半島で強固な平和を保障することができ、ひいては朝鮮半島の平和的統一を実現することができる」と主張するまでにいたった。
  周知の通り、北朝鮮の軍事体系は1962年に決定した「4大軍事路線」(全人民の武装化、全国の要塞化、軍の幹部化、軍の現代化)にしたがって50年間続けられている。この点を考えてみると、朝鮮半島の平和体制構築過程で論議されなければならない問題は南北の正規の軍事力の統制だけでなく兵営化した北朝鮮社会の改造まで念頭に置かなければならない。単純に休戦協定を平和協定に替え、アメリカが対北朝鮮敵対政策を中断すると約束したとして、平和体制が構築されるものではない。南北当局者と南北住民が戦争に対する認識を完全に変え、互いに和解し、協力して、民族共同体を復活させなければならないという認識が充満してはじめて、朝鮮半島の平和が到来するはずである。
  このためには南北双方が開放し、体制改革を断行することで、目指す価値を1つに統一しなければならない。先ず、北朝鮮の支配層は革命思想、即ち『主体思想を基礎とした全国的社会主義革命を実現する』という党綱領と‘社会主義的かつ自立的民族経済を建設する’という革命的経済路線と重工業優先主義の経済政策を捨て、グローバル(Global)時代に相応しい経済体制改革を断行し、南北間の交流協力のための環境造成に乗り出さなければならない。10日後の2月25日には、韓国で主思派に踊らされて一方的な対北朝鮮経済支援で北朝鮮体制の変化を誘導することができると主張していた「太陽政策政権」が退き、安保を礎に相互主義原則を基調とする李明博政権が誕生する。
  李明博氏は『安保をすべての対北朝鮮政策の礎として認識しなければならない。政治発展も、経済成長もすべて大切だが、安保を失ってはすべてのものを失うことになる』という確固たる安保観を基礎とした対北朝鮮政策を推進するだろう。 彼の安保観は正統的な韓米軍事同盟を主軸とし、周辺国家との協力を通じて、北朝鮮の無謀な核開発と戦争計画を抑止しなければならないというものだ。 彼は『韓米同盟が南北共助より優先されなければならず、政治的合意によって休戦協定の法的効力を代替することは正しいことではなく、北朝鮮核廃棄が実質的に進められる過程で平和協定も論議されなければならない。停戦協定体制を新しい平和協定体制へ代替する時期は朝鮮半島の完全な非核化が達成されてからでなくてはならない』と釘をさした。同じ脈絡から『NLL(北方限界線)は現休戦協定が存続する限り尊重されなければならず、朝鮮半島の戦争抑制と平和維持が重要で、NLLを無力化させようとするどんな企ても断固として阻止しなければならない』と主張した。
  このように李明博次期大統領は必然的に日米同盟と日韓関係が朝鮮半島の安全保障にどれほど重要かを充分に認識し、重要政策を立案している。彼は同時に対日関係を『最も近い国として、経済だけでなくすべての分野で深い関係を結んできた隣国であるから、より強力な友好協力関係を構築するのは当然のこと』だと指摘している。一言で韓・米・日間の徹底した共助の下で対北朝鮮政策を展開することを言及した。彼が選挙公約として提示した「非核・開放・3000構想」では『北朝鮮が核武器を廃棄し、経済を開放するという決断を下せば、国際社会も相応した決断を下すはずで、韓国・アメリカ、日本、中国及びロシアを含む国際社会の支援により、今後10年以内に北朝鮮の1人当たりの国民所得を3,000ドル水準に向上させることができる』というものだ。
  彼は『6・15共同宣言が差し迫った懸案である北朝鮮核問題の解決に何の役にも立たなかった』と指摘しながら、『徹底的ながらも柔軟な接近を通じて、9・19共同宣言の完全な履行を通じた北朝鮮核廃棄を導き出すことが対北朝鮮政策の優先的課題』だと強調し、その後推進する対北朝鮮支援を「対北朝鮮5大重点プロジェクト」として要約した。
  第一、経済分野で、300万ドル以上の輸出企業100社を育成するように支援する。
  第二、教育分野で、30万の産業人力養成を支援する。
  第三、財政分野で、400億ドルの対北朝鮮支援国際協力基金を設ける。
  第四、インフラ支援分野で、ソウル一新義州間の新京義高速道路建設を支援する。
  第五、福祉分野で、北朝鮮住民らの人間らしい生活のための福祉支援(食糧支援、医療支援など)を実施する。
  この「5大プロジェクト」の規模は盧武鉉・金正日の首脳会談で合意した対北朝鮮支援規模より決して小ないものではない。 しかし、最も大きな違いはこのプロジェクトの実行は徹底して北朝鮮核問題の解決と連繋しているだけでなく、北朝鮮の体制開放と連繋して施行するということだ。
  李明博新政権は上記で提示した支援計画を、更に段階別に連繋させると付け加えている。  ’
  1段階、即ち北朝鮮の核施設の無力化が完了する時期に、南北経済共同体の実現のための「合意」を進め、実質的な経済協力に必要な法的、制度的装置を準備する。
  2段階、即ち北朝鮮が核廃棄を本格的に履行する時期には5大支援分野のうち、教育と福祉分野プロジェクトを実施する。
  3段階、即ち北朝鮮の核廃棄が完了する場合、経済、教育、財政、インフラ、福祉など5つの分野の支援に着手し、400億ドルの国際協力基金を設けるために努力する。
  しかし、今すぐ解決しなければならない水害防止、山林緑化、食糧、医療部門のような人道的事業は北朝鮮核問題が解決されていなくても支援せざるを得ないと述べた。
  彼は、北朝鮮に『言うべきことは言い、要求することは要求する相互主義原則の適用』を強調し、離散家族の自由な往来をはじめとして、北朝鮮蛙致被害者、国軍捕虜送還の積極的な推進、北朝鮮住民の人権重視などを主要課題として提示した。
  筆者は李明博新政府の誕生が、金大中政府と盧武鉉政府によって過去10年間で壊された韓・米・日3ケ国の共助体制を回復させ、中・口両国との共助体制形成に寄与することと信じている。 李明博次期大統領は既に去る1月中旬に米・日・中・口4カ国に自身の「大統領特使団」を派遣し、友好協力増進のための2国間関係、特に北朝鮮核問題解決のための共同努力を強調している。
  筆者は李明博新政権の登場で、2006年10月、UN安全保障理事会が北朝鮮の核実験を糾弾し対北朝鮮制裁決議案(1718号)を採択した時のように、韓・米・日・中・ロ5ケ国
がもう一度一致した対北朝鮮圧力が加えられる場合、北朝鮮は屈服せざるをえないだろうと思っている。
  筆者はアメリカと中国、そして韓・日・口の5ケ国が力をあわせて厳格な経済制裁を加えながら、協商することがより効果的だと思っている。その為に先ず韓・日・米の共助体制を復活し共同で実質的対北政策を樹立するのが緊要である。北朝鮮住民の人権擁護、飢餓からの解放のような金正日政権の犯罪的行為によって惹き起こされた諸々の事件を自ら進んで解決するという「結者解之(自らの過ちは自ら解決する)」の態度を見せるまで各種の圧力を加重しなければならないと考える。
  6者協議に参加する5ケ国の団結した力ならば、北朝鮮のどのような瀬戸際戦術(Brinkmanship Tactics)も充分に克服できるはずだ。このようなプロセスを通じて、ようやく北朝鮮核問題の平和的解決も、朝鮮半島の平和体制形成も可能であるだろう。

 
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