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高等学校無償化問題と朝鮮学校

2010.3.8
コリア国際研究所 在日社会研究室

 2月25日、高校無償化問題と関係して衆議院議員会館で記者会見を行なった東京朝鮮学園金・スノン理事長は、朝鮮学校の教育目標について「朝鮮学校が民族的自覚と現代社会の要求に基づく資質を養い、国際社会と地域社会の発展に貢献する人材を育成するという教育目標を掲げて、国籍と思想、信仰、信條を問わずすべての在日同胞子女を受け入れている」と語った。
  また朝日新聞は2月24日の社説「朝鮮学校除外はおかしい」で、「朝鮮学校は日本の敗戦後、在日朝鮮人たちが、母国語を取り戻そうと各地で自発的に始めた学校が起源だ。1955年に結成された朝鮮総連のもとで北朝鮮の影響を強く受け、厳格な思想教育が強いられた時期もある。 だが在日の世代交代が進む中、教育内容は大きく変わった。大半の授業は朝鮮語で行われるが、朝鮮史といった科目以外は、日本の学習指導要領に準じたカリキュラムが組まれている」と主張した。
  しかし、こうした主張は朝鮮学校の実態をあるがままに伝えていない。朝鮮学校が日本の学校と変わらないということを主張するためのものである。これでは朝鮮学校問題を正しく認識し議論することはできない。
  高校無償化問題で「朝鮮学校除外はおかしい」「おかしくない」をその教育内容を含めて論議するなら、朝鮮学校教育のあるがままの姿を日本国民の前に示して判断を仰ぐのが筋ではないだろうか。

1、朝鮮学校側と一部メディアが朝鮮学校教育を意図的にボカしている内容

 それは第一に教育目的である。

 東京朝鮮学園金・スノン理事長は朝鮮学校の教育目標について「朝鮮学校が民族的自覚と現代社会の要求に基づく資質を養い、国際社会と地域社会の発展に貢献する人材を育成する」と述べている。
  しかし朝鮮学校の教員を養成する朝鮮大学校の教育目標について、朝鮮総連の許宗萬責任副議長は朝鮮大学校評議会(朝鮮大学校の最高指導機関)を指導し次のように述べた。
  「敬愛する(金正日)将軍様は、1994年5月6日のお言葉で『朝鮮大学校では学生を政治思想的にしっかりと準備させることに中心を置き、大学期間にチュチェ(主体)の世界観、首領観(注―金日成・金正日を崇拝すること)、民族観を人生観化した革命家、確固とした青年の中核をしっかりと育てなければならない』とおっしゃった。朝鮮大学は本質において在日朝鮮人運動の代、愛国の代を継ぐチュチェ型の青年中核を育てる源泉地である」(「朝鮮大学校評議会で行った総連中央許宗萬責任副議長同志の指導」2000年12月)
  この許宗萬責任副議長の発言が朝鮮学校の真の教育目標である。金・スノン理事長の説明は対外向けの教育目標なのだ。もちろん初級中級学校段階では、朝鮮大学校のような露骨な形は取っていない。しかしそこで教えている教員はすべて朝鮮大学校出身者である。「チュチェ型の青年中核を育てる源泉地」から巣立った教員がどのような指導を行なっているかは「おして図るべし」であろう。なお朝鮮大学校はそのカリュキュラムを公開していない。また金・スノン理事長のいう「民族」とは「金日成民族」とされるものであって一般的な意味での「朝鮮民族」ではない。

 第二にその教科内容である。

 朝鮮学校側は「朝鮮高級学校が日本高等学校と同等な教育課程を実施している」と主張している。しかしどのような内容で実施しているかは明らかにされていない。
  それをフォローするように朝日新聞社説は「在日の世代交代が進む中、教育内容は大きく変わった。大半の授業は朝鮮語で行われるが、朝鮮史といった科目以外は、日本の学習指導要領に準じたカリキュラムが組まれている」と主張した。
  ここで触れられていない科目は、週2時間当てられている「現代朝鮮革命史−金日成、金正日崇拝を教え込む科目」(対外的には「現代朝鮮史」となっている)と、同じく週2時間当てられている「社会」である。この「社会」は、高2で資本主義制度を紹介しながらそれを批判する内容、高3では主体思想と主体思想の世界観を教え、金父子と北朝鮮を賞賛する内容となっている。朝日新聞が取り上げた「朝鮮史」は高3の科目であるが、この科目も近代部分は北朝鮮の思想教育と結びついている。
  この三科目をあわせると、高3では全科目週30時間の内、実に7時間(23%)が思想教育もしくはそれに準じる内容である。もちろんすべての教科書は北朝鮮政府が検閲し最終決定する。

  こうした事実に目をそむけたまま朝日新聞は「中井担当相は一度、川端文科相とともに朝鮮学校を視察してみてはどうだろう。 そこで学んでいるのは、大学を目指したり、スポーツに汗を流したり、将来を悩んだりする、日本の学校と変わらない若者たちのはずである」などと主張している。
  朝鮮学校側もオブラートに包んだ形で主張をするのではなく、全教科書を開示して主張すべきだ。聞くところによると朝鮮学校側は教科書の提示を拒んでいるという。

 第三は政治的課外活動である。

 朝鮮学校の思想教育で中心をなすのは、教科内容よりも課外における政治教育である。
  このことについて許宗萬責任副議長は朝鮮大学で「朝高では中核学生(注:熱誠班)をうまく育て、彼らに依拠して教養事業を展開している。大学でも中核をしっかりと育て彼らに依拠して教養事業を展開しなければならない」と指導した(「朝鮮大学校評議会で行った総連中央許宗萬責任副議長同志の指導」)。
  朝鮮学校では、高校からはすべての生徒が朝鮮総連傘下の政治団体である「在日本朝鮮青年同盟(朝青)」に加入する。その中から朝鮮総連幹部子弟や、金日成・金正日に忠実と思われる生徒を選び出し、非公然組織「学習組(現在は学習班)」の予備組織である「熱誠班」に網羅するのであるが、そこに網羅された生徒たちが学校内朝青の役員に配置され全生徒を統率する。この組織の指導は朝鮮総連から任命された責任指導員が行なう。
  この「朝青」による政治教育体系は、神経のような組織であるために外からはうかがい知ることができない。外からは、朝日新聞が指摘するように「大学を目指したり、スポーツに汗を流したり、将来を悩んだりする、日本の学校と変わらない若者たち」のように写るのである。

 第四は、朝鮮総連(北朝鮮)が完全支配している点である。

 朝鮮学校側は今回の記者会見でも朝鮮総連色を薄めるために努力した。しかし朝鮮学校は朝鮮総連の柱となる組織であり、現在では朝鮮総連そのものといっても過言ではない。そして朝鮮総連が朝鮮学校の人事権を完全掌握している。
  その一体化はまず、地方組織、中央組織に関係なく、朝鮮学校と朝鮮総連のひんぱんな幹部の入れ替えとして進められる。
  現在の許宗萬責任副議長も川崎朝鮮学校の教員出身であり、南昇祐副議長や「益柱副議長なども朝鮮大学校教員出身である。そのほか教育局長など中央幹部の多くは教員出身である。また、朝鮮総連中央の幹部を経て朝鮮学校の幹部教員となる人たちも多くいる。例えば現在大阪朝鮮高校の金スンチョル校長は、中央本部教育局の副局長であった。
  それだけではない朝鮮総連は朝鮮学校の政治性を否定しているが、北朝鮮政権の国会議員(許宗萬など)が直接学校を指導している。最近も許宗萬代議員(責任副議長)は西東京第二初級学校や埼玉初中級学校を指導した。朝鮮大学校学長も北朝鮮の国会議員である。そればかりか教員に北朝鮮「労力英雄」の称号を与え(1月に西東京第二初級学校校長に授与)政治宣伝に利用している。
  また朝鮮学校の教員を養成する朝鮮大学の学位学職はすべて北朝鮮が授与している。「敬愛する将軍様は大学教職員たちに多くの配慮を下さり、教授、副教授、博士、学士など学位学職も与えてくださった」(「朝鮮大学校評議会で行った総連中央許宗萬責任副議長同志の指導」)のだ。
  政治団体である朝鮮総連がこれほどまでに深く関与した教育であるにも関わらず、朝鮮学校側は「教育に政治を絡ませてはならない」と主張している。

2、朝鮮総連が作り上げた朝鮮学校=「民族教育」という虚像

 朝鮮総連に属する在日朝鮮人は二つの側面を持っている。第一は日本の植民地時代から日本に住んでいる「特別永住者」という側面である。もう一つは北朝鮮権力と結びついた「北朝鮮の公民」という側面である。この二つの側面は互いに絡み合っているが、現在において本質的なのは「北朝鮮の公民」という側面である。
  しかし朝鮮総連はいつも前者の立場を強調しながら日本社会や国際社会に「民族教育」だと訴えて支持や同情を得ようとしている。そしてその裏で北朝鮮の対日、対南(韓国)戦略を実行しているのである。

 1)朝鮮学校はマイノリティの民族学校ではない

 朝鮮総連は在日朝鮮人の「特別永住者」という側面を前面に出し、朝鮮学校教育をいつもマイノリティの民族教育のように主張する。しかし、朝鮮学校はマイノリティの「自主的民族学校」ではなく、在日朝鮮人を北朝鮮国民(金日成民族)に教育する「外国人学校」である。したがってそこに適用される規範は少数民族に対する規範であってはならない。当然のことではあるが外国人学校に対する規範を適用しなければならない。
  外国人学校である以上、その処遇は当該国家間の外交的関係の中で、国際的諸条約を勘案して決定されるのは当然のことである。敵対国の学校を認め援助する国はない。
  朝鮮学校=民族学校という主張は、国家関係の外に朝鮮学校を置き、民族教育に関する国際人権諸条約の適用を受けようとすることに狙いがある。
  なお朝鮮総連が活用する「朝鮮人学校の資格助成問題に関する人権救済申立事件調査報告書」(日本弁護士連合会人権擁護委員会1997年12月)などは、朝鮮学校側の主張を鵜呑みにしている部分が多く、事実の誤認も多い。

 2)児童・生徒の「学ぶ権利」も朝鮮学校の権利のように主張

 外国人学校で学ぶ児童生徒に平等に適用されるべき条約は、少数民族や先住民の権利を守る民族教育の諸条約ではなく「子どもの権利に関する条約」である。だが「子どもの権利」はあくまで子どもに付随する権利であって外国人学校の権利ではない。しかし朝鮮総連は、子どもの「学ぶ権利」を朝鮮学校の権利と一体化させ、朝鮮学校を保護することが「学ぶ権利」の保護のごとく論理をすり替える。
  「学ぶ権利」を主張する朝鮮総連であるが、朝鮮学校では子どもたちの「学ぶ権利」を侵害していることが多い。たとえば朝鮮学校から日本学校に進学を希望する生徒に対してはさまざまな形で嫌がらせを行っているのだ。

3、朝鮮学校の実態をあからさまに示す許宗萬責任副議長の指導発言

 2000年12月19日の【朝鮮大学校評議会で行った総連中央許宗萬責任副議長同志の指導発言】には朝鮮学校と北朝鮮の関係、その教育目的や実態が明確に示されている。以下ではその内容を翻訳して紹介する。

 【朝鮮大学校評議会で行った総連中央許宗萬責任副議長同志の指導発言】 主体89(2000).12.19
 
  朝鮮総連中央が朝鮮大学校に対する調査支援事業(注:検閲指導)を行なってから一定の時間が過ぎた。外国語学部長が討論したように、大学を変える主人は中央の活動家ではなくあくまで大学の教員たちだ。
  総連中央は朝鮮大学事業に敬愛する将軍さまの思想と領導を具現するに当たって、いわば相談役的役割を行い、ともに仕事はするが実際の主人は大学の教員たちだ。
  政経学部長は討論で組織に対して大きな罪を犯したと言ったが、新潟で起きた不祥事(注:朝鮮大学校生が起こした強姦事件)は偶然起こったものではない。
  大学の問題点の膿がふきだした必然的事件であった。
  総連中央が敬愛する将軍さまの前に大きな罪を背負っているのだ。
  学長同志の報告と大学の責任活動家の討論を聞いて多くのことを感じた。
  思想的問題もそうだし、活動方法にいたるまで幹部たちが深く熟慮した感じがする。しかしまだまだ発酵段階、熟成させる過程である。正直に言って低い段階にある。
  評議会は、大学の最高決議機関であり執行機関であるが、今日は欠陥に対して指摘というよりは問題点を明らかにしたうえで対策案を提起しようと思う。
  朝鮮大学は、来年に45周年を迎えるが、半世紀の間、大学事業を進めてきた。
  敬愛する将軍様は大学教職員たちに多くの配慮を下さり、教授、副教授、博士、学士など学位学職も与えてくださった。
  しかし、朝鮮大学はその要求どおり仕事ができないでいる。
  今回朝鮮総連中央が進めた調査支援事業の目的は、大学の学生実態と教養事業状況を具体的に調査し、学生教養事業での転換と新しい世紀の運動要求に合わせて大学事業を発展させる端緒を開くことにあった。
  総連中央がこうした目的で調査支援事業を行なったのは、敬愛する将軍さまの思想と領導が全面的に実現する新世紀を前にして朝鮮大学校事業を決定的に発展させてこそ、これからの幹部たちを要求に合わせて育成することが出来、在日朝鮮人運動と総連事業を担保することができるからだ。
  敬愛する将軍様は1994年5月6日のお言葉で『朝鮮大学校では学生を政治思想的にしっかりと準備させることに中心を置き、大学期間にチュチェ(主体)の世界観、首領観(注―金日成・金正日を崇拝すること)、民族観を人生観化した革命家、確固とした青年の中核をしっかりと育てなければならない』とおっしゃった。朝鮮大学は本質において在日朝鮮人運動の代、愛国の代を継ぐチュチェ型の青年中核を育てる源泉地である。
  一般的に朝青(在日本朝鮮青年同盟)でいう「愛国の代、民族の代」を継ぐ問題とは要求性が違う。
  朝鮮大学校で青年革命家、愛国運動の指導的役割を担う民族幹部の後継者を育てなければ在日朝鮮人運動において革命の代、愛国の代を継げなくなる。そのような重大な使命が朝鮮大学校に課せられている。
  現在総連はあらゆる事業を、当面総連19回大会を契機として、主体91(2002)年に迎える敬愛する将軍さまの生誕60周年に向けて繰り広げている。
  朝鮮大学校も敬愛する将軍さまの生誕60周年までに、大学事業を自らの使命と役割に合うよう正しい軌道に乗せなければならない。
  教養部長(注;学習組統括責任者)が数年のうちに変えると討論したが60周年までに根本的に変えなければならない。
  そのような強い決心をもってかからなければならない。
  今回総連中央は、学生教養事業を中心に据えて調査支援事業を行ないながら、総連の幹部養成基地としての朝鮮大学校事業の全般的改善強化を念頭に置き、調査し研究もした。祖国(注:北朝鮮)と協議も行なった。
  わたしは、朝鮮大学が学生教養事業を転換し当面の突破口を開いていく問題と、今後研究を深め大学事業を大きく改善していく上で提起されるいくつかの問題に対して話すことにする。

1、評議会構成員が、自らの位置と使命の重大性を深く心に刻み、その責任感と役割を高めることについて(以下要約)

 評議会構成員は敬愛する将軍さまの思想と領導を大学事業に具現するために、事業を作戦し指導する指揮官だ。
  特に同志たちは、大学事業を敬愛する将軍さまの前に責任を負った責任者たちだ。
  同志たちが、敬愛する将軍様の高い政治的信任と期待に忠実に応える姿勢と立場がどうであり、どのように活動するのかによって大学事業は左右される。
  今日大学学生の実態は、考えていたよりもはるかに深刻だ。
  現われた問題を分析した結果、大学事業には深刻な不足点がある
  @大学の幹部たちは、敬愛する将軍さまの思想と意図を深く心に刻み、原則を固守し、お言葉(注:金正日のお言葉)を最後まで貫徹しようとする透徹した姿勢が不足している。
  A大学事業の不足点は、あらゆる事業で政治活動を先行させず行政実務的に処理しているところにある。
  B学生教養事業で朝青(在日本朝鮮青年同盟)朝大委員会を活用できていないのが大きな欠点だ。
  新しい世代の教養は新しい世代が行なわなければならない。
  今回東京朝高(東京朝鮮中高級学校)朝青活動を調査してみたところ、教員たちが後ろで朝青を支えて彼らが全面に出るようにしている。
  もちろん高級部生(注:高校生)なので、水準には問題はあるが学生自身が朝青組織の主人となってすべてのことを推進している。
  そして、朝青組織生活が強化され不正とも闘うようになったという。
  朝高では中核学生(注:熱誠班)をうまく育て、彼らに依拠して教養事業を展開している。
  大学でも中核をしっかりと育て彼らに依拠して教養事業を展開しなければならない。
  わたしは、このたび祖国に行って金日成総合大学、金日成社会主義青年同盟事業を調べてみたが、完全に軍幹部水準だと言っていた。
  青年学生たちの政治組織である朝鮮大学校朝青は、一般朝青組織とは異なる。
  朝鮮大学校に見合った朝青事業に転換しなければならない。

2、学生教養事業を改善するためのいくつかの対策について

 @教職員の中に主体の思想体系、領導体系を徹底的に打ちたて、将軍さまのお言葉を無条件貫徹する革命的気風を打ち立てなければならない。
  敬愛する将軍様(注:金正日)は次のようにお言葉を下さった。
  「総連では、いかに世代が交代し、実情に合わせて事業方法を変えるといっても、主体の思想体系と領導体系を打ち立てる事業を変わることなくしっかりと堅持して推進しなければならない」
  主体の思想体系と領導体系を打ち立てる事業は、われわれの生命線であり、そのことは、曲折を経てきた在日朝鮮人運動が歩んだ全歴史過程がよく示している。
  特に幹部を養成する大学が、この点を確固と堅持し、いつも将軍様に忠誠を尽くさなければならない。
  そのためには、総連と朝鮮大学校事業に下された敬愛する将軍さまのお言葉思想で深く武装し、それを徹頭徹尾貫徹する教育革命家としての姿勢と立場を正さなければならない。
  A学生に対する政治思想教育を決定的に強化し、全般的な学習気風を打ち立てる対策を立てなければならない。
  B朝青朝大委員会を決定的に強化しなければならない。
  中核学生(熱誠班)の役割を高める対策をしっかりと立てなければならない。
  現在円滑に稼動できないでいる中核学生育成体系を今学年度内に早く正常化させなければならない
  C祖国講習体系を変えなければならない。
  4年生で組織していた祖国講習を2年生の時に行なわなければならない。
  卒業生講習を2学年時に移し、教養機会を前倒しし、3、4学年時に目的意識的に教育しなければならない。
  同時に、4学年時も引き続き朝青事業を行なうようにしなければならない。そうして朝青組織の戦闘力を高めなければならない。
  また卒業した後、朝青組織をはじめとする基本組織に配置される学生たちを選抜して祖国で数ヶ月間講習を受けるようにしなければならない。
  D学生を教養する上で有利な条件となっている全寮制が効果を発揮するように寄宿舎事業を改善する対策を立てなければならない。

3、新世代の要求に応じて朝鮮大学校事業を強化発展させるための中長期的改善対策を立てることについて

 @育成する人材の要求に合わせて学部、学科構成とカリュキュラム、教育内容の改編を研究しなければならない。
  A大学教育の質的水準を高める具体的対策を立てなければならない。
  B朝鮮大学校の免費生、奨学金制度を再検討し、その実効性を高めなければならない。
  C大学の学生数を確保する対策を立てなければならない。

 敬愛する将軍様は総連と在日朝鮮人運動の運命がかかっている朝鮮大学校をほかでもないここに集まった同志たちに任されておられます。
  私は、同志たちが、敬愛する将軍様のお望みどおりの大学とするため、生誕60周年―2002年までの目標と計画をしっかりとうち立て、大学教育事業で必ず転換を成し遂げるだろうことを固く信じます(了)。                                                               

 * 文章にぎこちないところがあるのは、原文がそうなっているため。段落も原文どおり。
 * 金正日発言以外の太字は翻訳者がつけたもの。

 むすび

 以上で見たように現在の朝鮮学校教育は、朝鮮総連(北朝鮮)に支配された北朝鮮国民養成教育である。この教育が維持される限り、今回の「高校無償化問題」のような日本社会との摩擦は今後も絶えないであろう。在日朝鮮人も子女の「学ぶ権利」を守り国際的に認知された「民族教育」を実現するためには、朝鮮学校を金正日政権から切り離し、自主的民族教育に変えていかねばならない。
  一方日本政府も今回の問題を契機にして、もう少し朝鮮学校の実態を正確に把握する必要がある。そうしてこそ正しい在日朝鮮人政策が出てくる。
  また一部のマスコミや人権派弁護士も、朝鮮学校内部の詳細な状況調査は困難だとしても、教科書ぐらい精査して議論する必要がある。カリュキュラムや教科書の中身も精査しないで朝鮮学校側の主張を鵜呑みにしているようでは、偏った「人権擁護」となるだろう。
  過去から現在に至る朝鮮学校内の人権侵害についても調査を深めなければならない。朝鮮総連の方針に異を唱える教員の追放、日本学校進学希望者への嫌がらせなど朝鮮学校では数々の人権侵害が行われてきたからだ。
  「調査なくして発言なし」とよく言われるが、朝鮮学校問題に対しては、きちっとした調査もしないで発言している人があまりにも多い。
  また、支援される主体は朝鮮学校で学ぶ高校生であり朝鮮学校ではない。そうした視点に立ったとき「朝鮮学校除外はおかしい」の議論は「おかしい」のではないのだろうか。無償化の資金が、朝鮮学校を含め私学の場合、「学校法人など学校設置者に支払われる」となっているために朝鮮学校が議論の主体となったのだろうが、正確には「朝鮮学校生徒の除外はおかしい」となるべきだ。「学ぶ権利」の趣旨から見ても生徒個人が支援を受けることに異議を唱える人はいないであろう。
  多くの在日朝鮮人は朝鮮学校当局を通じて支援が行なわれることに不安を感じている。現在朝鮮学校が地方自治体から受けている児童生徒の負担軽減のための補助金も、学校の運営にまわされていることが多いからだ。そうした状況を勘案しても、今回「高校無償化」の支援が行われることになったとしても、その支援金は朝鮮高校の生徒に直接渡るようにする必要があるだろう。

 【資料】

 民族教育に関する国際人権諸条約(抜粋)

 ■国際人権規約B規約
 ■子どもの権利に関する条約
 ■人種差別撤廃条約

 ■国際人権規約B規約
  (市民的及び政治的権利に対する国際規約)

 第27条 種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。

 ■子どもの権利に関する条約(国際教育法研究会訳)

 第8条(アイデンティティの保全)
  1 締約国は、子どもが、不法な干渉なしに、法によって認められた国籍、名前および家族関係を含むそのアイデンティティを保全する権利を尊重することを約束する。
  2 締約国は、子どもがそのアイデンティティの要素の一部または全部を違法に剥奪される場合には、迅速にそのアイデンティティを回復させるために適当な援助および保護を与える。

 第29条(教育の目的)
  1 締約国は、子どもの教育が次の目的で行われることに同意する。
  (c)子どもの親、子ども自身の文化的アイデンティティ、言語および価値の尊重、子どもが居住している国および子どもの出身国の国民的価値の尊重、ならびに自己の文明と異なる文明の尊重を発展させること。
  (d)すべての諸人民間、民族的、国民的および宗教的集団間ならびに先住民間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神の下で、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすること。

 第30条(少数者・先住民の子どもの権利)
  民族上、宗教上もしくは言語上の少数者、または先住民が存在する国においては、当該少数者または先住民に属する子どもは、自己の集団の他の構成員とともに、自己の文化を享受し、自己の宗教を信仰しかつ実践し、または自己の言語を使用する権利を否定されない。

 ■あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)

 第2条
  2 締約国は、事情が正当化する場合には、締約国に属する特定の人種的集団又は個人に人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を保障することを目的として、社会的、経済的、文化的その他の分野において、その集団又は個人の十分な発展及び保護を確保する特別のかつ具体的な措置をとる。ただし、これらの措置は、いかなる場合にも、その結果として、目的が達成された後、異なる人種的集団に対して不平等な又は別個の権利を維持させることになってはならない。
  第7条
  締約国は、人種差別に導く偏見と闘い、諸国家間及び人種的又は種族的集団の間における理解、寛容及び友好を促進し、並びに国際連合憲章の目的と原則、世界人権宣言、あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際連合宣言及びこの条約を普及させるために、特に、授業、教育、文化及び情報の分野において即時のかつ効果的な措置をとることを約束する。

以上

 
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