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日韓GSOMIA破棄計画 周到な準備

コリア国際研究所所長 朴斗鎮
Japan In-depth2019年11月27日寄稿

2019.11.28

 韓国青瓦台(大統領府)の金有根(キム・ユグン)国家安保室第1次長は11月22日午後6時、記者会見を開き、23日午前0時に失効期限が迫っていた日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、協定終了通告の効力を停止すると発表した。文政権のGSOMIA破棄作戦はついに挫折した。北朝鮮は5月29日、「南(韓国)当局は、戦争協定(GSOMIA)の破棄という勇断をもって、意志を見せるべきだ」として文在寅に催促していたが、再び期待を裏切られることになった。

日韓GSOMIA破棄は文在寅大統領の「反米援北」策

 文在寅大統領の「日韓GSOMIA(以下GSOMIA)破棄作戦」は、南北関係第1主義政策に基づく米韓日協調分断路線から出たものである。文在寅大統領は執権する前、朴槿恵政権末期の2016年12月にすでに「(GSOMIAの締結は)国民的議論なしに拙速に推し進められ、再検討の必要がある」と述べ、GSOMIAを破棄の考えを明らかにしていた。
 しかしGSOMIAは、朴槿恵政権が独自に進めたものではない。米国の東アジアとインド太平洋戦略の一環として、米国の肝いりで2016年11月23日に締結された協定だ。そこでの情報共有は、韓国に配備されているTHAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)とも密接に連携されている。従ってこの協定の破棄は、米国の戦略に対する公然たる挑戦となる。韓国が米国との協議もなく簡単に破棄できるものではなかった。そこで文政権は、反米色を消し日本との紛争という形でGSOMIA破棄を推進する策を講じることにした。

GSOMIA破棄のための反日扇動開始

 GSOMIA破棄のための反日世論扇動は2015年12月末の「日韓慰安婦問題合意」破棄と合わせて本格的に進められた。そして朴槿恵前大統領時代に「徴用工問題」判決にかかわった大法院判事らを逮捕投獄し、文政権の意のままになる金命洙(キム・ミョンス)を地方裁判所からの破格の抜擢で大法院長に据え、昨年の大法院「徴用工賠償判決」を誘導して日本政府を挑発した。そればかりか、その延長線上で1965年に締結した「日韓条約」まで揺さぶる行動に出た。
 この問題での日本側の協議要請まで拒否した文政権は、日本政府が、7月1日に韓国向けフッ化水素をはじめとした半導体材料3品目の輸出管理厳格化を発表し、韓国をホワイト国から外すと、官製反日運動を組織して日本製品不買運動まで展開させ、GSOMIA破棄を対抗カードとして持ち出し8月22日に日本側に通告したのである。この時期を選んだのは、曺国スキャンダルで窮地に立たされた文政権が、世論の反転を狙ったこととも関係している。

GSOMIA破棄準備の裏で続けられた中国との盟約

 文政権のGSOMIA破棄策は中国との内通のもとに行われていた。その政策が文大統領訪中前、2017年10月末に出されたいわゆる「3NO原則」である。3NOとは、韓国外交部が「韓中関係改善関連両国間合意」発表の前日である2017年10月30日に康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が国会での与党議員の質問に答える形で、(1)韓国内にTHAADを追加配備しない、(2)米国のミサイル防衛網(MD)に加わらない、(3)日米との軍事同盟を構築しないという立場を明らかにしたことを指す。これに対して、米国政府は表面的には反応を見せなかったが、それまで築いてきた日米韓三カ国連携が公然と踏みにじられたとして警戒心を高めた。
 この3NO原則は、2017年12月14日午後、北京市内の人民大会堂で行われた文在寅大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談で、朝鮮半島での戦争を容認しないなどの4原則の合意で一層強化された。こうした中国接近の背景には、文大統領の反米・反日思想と、東アジアの勢力構図を米国衰退の流れでの米中対立と見て2049年までに中国が米国を追い抜くとの認識があった。

米国の圧力で破綻した文在寅の陰謀

 反日を扇動し日本に責任を押し付ける形でのGSOMIA破棄陰謀は、8月22日に文政権が破棄宣言を行った時点で米国から「反米援北行動」であると見破られていた。
 米国務省と国防総省は8月22日(現地時間)、文政権の日韓GSOMIA破棄決定に対して、「文在寅政権(Moon administration)に強い懸念と失望を表明する」との見解を表明した。米国が公式論評で「ROK(韓国)」と呼ばずに「文在寅政権」と呼ぶのは異例なことだ。
 米国は、韓国がGSOMIA破棄という中朝を利する行為に出るならばそれなりの対応を取らざるを得ないとの強い姿勢で韓国に迫った。期限が差し迫った11月に入ってもデイビッド・スティルウェル米国務省東アジア・太平洋担当次官補(6日に金鉉宗国家安保室第2次長と会談)、マーク・ミリー統合参謀本部議長(14日に朴漢基韓国軍合同参謀本部議長と会談)、エスパー国防長官(15日に文在寅大統領及び鄭景斗国防長官と会談)と、3人の高官が立て続けに訪韓し、GSOMIA継続の説得にあたった。いずれの会談にも、元太平洋軍司令官で、GSOMIAの強力な支持者であるハリー・ハリス米駐韓大使が深く関与した。
 文大統領は、15日のエスパー米国防長官との会談時にも日本の姿勢に変化ない限り日韓GSOMIA延長は難しいとGSOMIA破棄を伝えていた。しかし失効の6時間前になって方針を180度転換しGSOMIA破棄見送りを決定した。そこにはより強烈な米国からの圧力があった。
 ホワイトハウスは、破棄強行に備え最も強力な批判声明準備しているとしていた。また米政府関係者「韓国が我々の立場を受け入れていないなら、『パーフェクト・ストーム(最悪の状況)』に見舞われるかもしれない」と語った。
 米議会上院も危機感を示し21日、韓国政府に破棄の再考を促す決議を全会一致で採択した。決議に法的拘束力はないが非常に重い決議だ。米政府だけでなく議会からも文政権は警告を突きつけられた。
 こうした動きのほか駐韓米軍駐留費負担増額問題と関連して米国が1個旅団の撤収を検討しているとした情報も流れた(朝鮮日報11月21日)この報道については米国防総省のホフマン報道官は21日の声明で否定した(ロイター通信)が、日韓GSOMIA破棄が重なれば現実化するのではとの懸念は打ち消せなかった。
 米国が国を挙げて警告する中で、訪米していた韓国国家安保室第2次長の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)に対して決定的な警告を行ったとの情報もある。
 GSOMIA破棄を強力に主張したのは国家安保室長の鄭義溶(チョン・ウィヨン)と第2次長金鉉宗だったと言われている。特に金鉉宗はこの件で米国との窓口となっていたが、GSOMIA破棄で韓米同盟はアップグレードするなどととんでもないことを言っていた人物だ。またGSOMIA破棄をカードにすれば必ず日本は折れてくると文大統領に進言していたのも金鉉宗だったとされている。
 米国から帰国した金鉉宗第2次長は、21日の国家安全保障会議(NSC)に出席し、米国政府側との会談内容などを報告したがその内容は明らかにされていない。
 文在寅政権は「GSOMIA破棄見送り声明」を出したあとも日本に対して様々なクレーム付けてきているが、日本は冷静に対処すれば良い。米国ではすでにGSOMIAは延長されたものと既成事実化している。少なくとも今後1年間は蒸し返すことはできないだろう。

以上

 
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