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今週のニュース

朴大統領 弾劾案可決から1カ月、世論動向に変化

コリア国際研究所所長 朴斗鎮

2017.1.17

 朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追案が昨年12月9日に国会で可決されてから1カ月が過ぎた。1月12日には憲法裁判所で4回目の弁論が開かれ、崔順実裁判も2回目の公判が開かれた。16日には憲法裁判所で5回目の弁論が開かれ、崔順実(チェ・スンシル)と安鐘範(アン・ジョムボン)被告が憲法裁判所に出廷して証言した。
 崔氏は「証人(崔氏のこと)がいなければ朴大統領が何も決定できないから側に置こうとしたのか」との質問に対して「話にもならない」と証言し、またチョン・ホソン、アン・ボングン、イ・ジェマンの「ドアノブ」3人衆を通じて国政に介入したのか?との質問には強く否定した。
 また、17日に開かれた憲法裁判所第6回弁論では、崔順実のものとされたタブレットPCの内容は証拠採用されなかった。
 こうした中で、朴大統領は、法廷対決に備える一方、世論にも対応する姿勢を見せている。朴大統領側の関係者は聯合ニュースに対し、「一方的に世論が良くない方向に形成され、大統領に非があったとしても(実際より)拡大されたのではないかという残念な気持ちがある」と述べた。世論をあおる一方的な主張や報道についてモニタリングしており、必要な場合は法律代理人を通じ問題を提起するとの方針を示した。青瓦台は、事実でなく根拠のない疑惑に対しては強く対応し、朴大統領から離れた支持層(保守層)を再結集する必要があると判断している。しかしセヌリ党が崩壊し、保守層が浮動票化してしまった状況で再結集はそう簡単ではない。

1、ショックから立ち直りつつある保守勢力

 「崔順実ゲート」報道が乱舞する中でこの間、朴大統領に対するデマと誤報は韓国のみならず日本のテレビ局をも覆った。
 いわく、朴槿恵大統領は青瓦台で「クッ(シャーマニズムの祈祷)」を行った、チヤ・ウンテックが深夜に朴大統領と密会した、崔順実が大統領専用機に同乗した、崔順実の息子が青瓦台に勤めている(崔順実には息子がいない)、THAAD(サード:高高度ミサイル防衛システム)配置も国定教科書も開城工団閉鎖も韓日慰安婦合意も韓日GSOMIA(軍事情報包括保護協定)合意も崔順実のお告げだった、などとのとんでもないデマと誤報が世界に発信された。
 甚だしくはアメリカ大使館がキャンドルデモに賛成した、アメリカ政府が「ろうそくデモを支持した」などの報道も捏造された。
 こうして左派系労組と親北・従北系の市民団体が中心となって、選挙で選ばれた大統領を法に基づく審判ではなく「人民裁判」的デモと罵倒で引きずり降ろそうとした。
 崔順実スキャンダル報道でショックを受け脱力感に陥っていた保守層も、報道の中に誤報とデマが数多く含まれていることに気付き、ろうそくデモに参加していた人たちも朴大統領弾劾棄却へと結集し始めている。それはデモの動員数にも表れ始めた。
 韓国警察は2017年1月7日(土)にソウル光化門広場に集まった 11回目のろうそく集会参加者数を2万4000人と集計した。一方同日にソウル江南一帯と東亜日報社屋前、ソウル駅広場で開かれた保守団体の「弾劾棄却集会」参加者数を3万7300人と集計した。11回にわたった集会の中で、警察発表の保守団体集会参加者がろうそく集会参加者を上回ったのは初めてだ(朝鮮日報韓国語版2017・1・9)。
 しかし、この逆転数字発表に「ろうそくデモ」を主導する左派側「朴槿恵退陣非常国民行動(退陣行動)」がかみついた。これで警察はデモの数字発表をやめることになるが、1月14日(ソウル最高気温-4度C)のデモでの主催者発表では保守側「大統領弾劾棄却のための国民総決起運動本部 (弾棄国) デモ数がろうそくデモを大きく上回った(中央日報2017・1・14)
 この背景には、JTBCの記事やマスコミの流したデマと誤報などに対して保守側が「ねつ造」だとする根拠を次々と示したことが関係している。その一つがJTBCが持ち出したタブレットPCの「ねつ造疑惑」である。

2、保守陣営、JTBC報道の「タブレットPC」は「ねつ造」と主張

 2017年1月5日 韓国の「政治検察糾弾大会」においてインターネットTV放送「神の手」代表のシン・ヘシキ氏がタブレットPCの件はねつ造だと主張した。
 彼の主張によると、JTBCが報道した崔順実のものとするタブレットPCは、2012年7月以後1度も使っていないという。オフデーターを一回もしていなかったというのだ。またこのタブレットPCには文書修正機能はないとしている。
 シン・ヘシキ代表は「このタブレットPCは大統領選挙初期過程で使っていたもので朴槿恵大統領が当選(2012年12月)した後は使っていない。所有者も明確でない。崔順実が見たかもしれないがこのタブレットPCで文書を修正して青瓦台に報告したというのは完全にウソである。孫石熙(ソン・ソッキ)がデッチ上げたものなのに検察は孫石熙を捜査もせず拘束もしていない」と主張し検察を強く非難した。そして「またこのタブレットPCをどこで見つけたと言ったのか。高ヨンテの事務所でJTBC記者が見つけたと言っていた。同じ日に京郷新聞がその事務室に行ったがドアーには鍵がかけられ閉まっていたという。それなのにJTBC女記者はどのようにしてそこに入ったのか」と入手経路の疑惑にも言及した。

 *注:JTBCの主張では、その記者が最初に元高ヨンテの事務所に行ったときドアーが開いていてタブレットPCを見つけたが、一度JTBC事務所に戻り会社で相談して再びその事務所に向かい管理人の承諾を経て持ち帰ったとしている。

 この行為に対して他人の物を無断で持ち去ったとしてト・テウ弁護士がA記者と会社関係者を「窃盗罪」で告発した(聯合ニュース韓国語版2016・12・23)。
 続けてシン代表は「事務所に置いてあった机の中からタブレットPCを発見したと言っているが、その机は誰のものなのか。高ヨンテの机だった。タブレットPCはほかでもない高ヨンテのものだった。ところが高ヨンテは使っていなかった。ではなぜその中にデーターが入っていたのか?誰かが捏造したからだ。その放送をしたのは誰なのか?ほかでもないJTBCの孫石熙である」と孫石熙氏の逮捕・拘束を求めた。

 *引用情報
 정치검찰 규탄대회에서 신혜식대표의 조작전문 손석희태블릿PC를 자세히밝히다.
 YOUTUBE https://www.youtube.com/watch?v=V96r7wQJIY0

 

 一方1月14日の保守側集会ではビョン・フィジェ前メディアウォッチ代表が「来週にタブレットPCがねつ造さされたという根拠を明らかにする」と予告した(聯合ニュース韓国語電子版2017・1・14)。
 またJTBCの朴大統領の顔手術注射跡も「ねつ造報道」と糾弾されている
 12月18日JTBCニュースルームで孫石熙氏は、セオル号事故時の7時間の間で朴謹恵大統領が顔の整形を受けたと報道し、19日の放送ではその痕跡がJTBCによって捕捉されたとして報道した。録画分析サイトの金ジュノ記者は、報道画像にねつ造があると判断、映像専門家たちと共に分析作業を行い、ねつ造の事実を画像で具体的に示しインタネートサイトで公開した。

 *引用情報
 박대통령 성형의혹은 JTBC의 영상조작
 YOUTUBE https://www.youtube.com/watch?v=I9UzWShjxjw

3、JTBCに付きまとう誤報と「疑惑報道」

 JTBCが誤報と疑惑情報を連発するのはなぜなのか?そこにはいくつかの理由と背景がある。
 ①それは何よりも社長兼アンカーである孫石熙氏の体質と関係している。

 左派的性向に加え「トップ屋」的気質の強い孫石熙氏、彼はこれまでもたびたび誤報を出している。
 主な誤報だけでも
 1)「五大洋集団自殺事件」での孫石熙氏の「他殺」誤報
 2)セオル号事件で誤報を流し「潜水鐘」投入を扇動して救出を妨害
 3)孫石熙氏だけが 誤報を出した 京畿道城南市の換風口事故
 4)別人物のインタビューに「韓国防衛産業学会チェ・ウソク会長」字幕を挿入
 5)米軍基地内で生物化学兵器実験を行ったという歪曲誤報
 などがある。

②それはまた、なりふり構わぬ視聴率獲得姿勢とも関係している

 2011年12月1日に開局したJTBCであるが、「崔順実ゲート」報道までは視聴率低迷で親会社の中央日報役員からは「厄介もの」扱いされていた。そうした焦りもあり、セオル号事件時の「潜水鐘(ダイバーベル)投入扇動報道」まで引き起こした。視聴率低迷からの脱出、そこになりふり構わぬJTBC報道の動機が潜んでいる。
 こうしたことからJTBCは、「崔順実タブレットPC報道」だけでなく、直近のチョン・ユラ(崔順実の娘)逮捕報道でも報道倫理を逸脱した手法を取った。
 JTBC記者は、サムソンがらみ?の独自ルートで得たチョン・ユラ情報をデンマーク警察に通報し、チョン・ユラを逮捕させた上で逮捕場面を映像にして報道したのである。
 この報道に対しては報道倫理と記者の役割を逸脱しているとして朴サンヒョン・メディアティ理事などから強い批判が出ている。人権侵害にも関わる問題だからだ。
 こうした報道姿勢は日本ではありえないものだった。ところが驚くべきことに、最近一部TV情報番組(1月6日朝)では、この報道倫理に抵触する「チョン・ユラ逮捕」報道をあたかも正当な「特ダネ情報」のごとく報道した。「崔順実ゲート」報道をキッカケに無責任な韓国流報道が日本にも伝染しはじめたようだ。

③それはJTBCの背後に政治勢力が存在していることと関係している

 今韓国では、JTBCテレビが崔順実のものとされるタブレットPCを報道したタイミングが、次期大統領選挙にからんだあまりにも絶妙な時期だったために、これまで以上に政治勢力との結びつきに関心が寄せられている。
 その一つは次期大統領候補とされている文在寅氏の北朝鮮への情報漏えいが暴露された問題との関連であり、二つ目は昨年10月24日の国会での朴大統領の改憲演説との関連だ。この朴大統領改憲演説の流れに潘基文(パン・ギムン)氏が乗っかれば野党政権誕生の目はほぼなくなっていた。この二つの問題は「太陽政策」復活をめざす野党政権誕生にとってはまことに好ましくない状況だったのである。
 まさにその24日の朴大統領演説当日の夜に「崔順実のタブレットPC暴露報道」は行われた。これで文在寅「共に民主党」元代表の北朝鮮への情報漏えい疑惑も、朴大統領主導の政局も吹っ飛んでしまった。JTBC報道の政治的背景に注目が集まるのは当然だろう。
 実はJTBCの親会社は中央日報で中央日報の洪錫炫(ホン・ソッキョン1949年10月20日生)会長は、サムソンの李健熙会長の夫人である洪羅喜(ホン・ラヒ)氏の実弟である。彼は盧武鉉(ノムヒョン)政権時代に駐米大使まで務めた人物で政治にも強い関心を持っている。過去2003年の盧武鉉政権誕生後に深まったサムソン財閥と盧武鉉政権との蜜月関係構築では大きな役割を果たした。もちろん文在寅氏との関係は知る人ぞ知る間柄だ。そのために盧武鉉大統領が掲げた財閥改革や経済の民主化公約は何一つ手がつけられなかったほどだ。
 そうしたことからJTBCの「崔順実タブレット報道」について、窮地に陥った「共に民主党」の文在寅元代表を救出するため、もしくは「中央日報紙オーナーが大統領選挙に出馬するため」、との疑惑が付きまとうのである。その背後にサムソン財閥が直接絡んでいるかどうかはいまのところ明らかではない。「崔順実ゲート」で副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏が特別検察に参考人として呼び出され、逮捕されるかもしれないとの状況となっているからだ。
 JTBC報道がサムソン内部の権力闘争から出たものなのか、それともサムソンが野党政権を誕生させるための巧妙な工作劇だったのか?その両方を狙った高度な陰謀劇だったのか?それは李在鎔氏の行方(特別検察の逮捕請求が認められ逮捕されるかどうか)によって見えてくるだろう。

【資料】

問題の「タブレットPC」についての李・ギョンジェ弁護士に対する朝鮮日報のインタビュー

記者:タブレットPCに盛られた崔順実のセルカ写真と使用者記録が出たが、どうして自分のものではないと否認することができるか?

李弁護士:検察が、セルカレンズで取ったという写真をプリントして来て 「これがあるからあなたのタブレットではないか?」と問うと、崔さんは 「これはいつの写真なのか?」と応じた。またテブレットPC 自体を使うことができないと言った。
私が検事に 「そのテブレットPCを本人に直接見せるように求めると、「ポレン式(科学捜査式) 検査をしているので手元には今ない」と返事した。私は法廷でもこの要求をした。あまりにももどかしく 「本当に現物が存在するのか?」とも問うた。

記者:個人的には私も早く知りたい問題だが、JTBCとしては取材源保護問題がかかっている。すべてを明らかにすることはできないと思うのだが?

李弁護士:タブレットPCの所有はキム・ハンス青瓦台行政官のものであることが明かにされた。使用者が誰かということだが、パスワードは共用で使用者IDは多くの人のだ。それなら多くのファイルを接合してタブレットPCに入れてから崔順実の物だとして提出することも可能だ。これは常識的な疑問だ。JTBCは取材源保護をしなければならないが、検察は明らかにしてくれなければならない。

記者:JTBCが報道したタブレットPCに関していわゆる 「背後企画」があると疑うか?

李弁護士:検察と弁護人側が同じ答になるかは分からないが、ある程度の輪郭と関連者を把握している。私たちは崔順実の物ではないという決定的証人も確保している。
タブレットPCが出現する過程がとても作為的だ。去年の 10月 24日午前大統領が国会で 「任期の中で改憲する」と演説すると、午後に JTBCでこれを持ち出した。「烏飛梨落(偶然という意味)」だと言うにはあまりにもタイミングが絶妙だ。

記者:タブレットPC 問題の申し立ては崔順実の国政壟断を希薄させようとする弁護人の戦略という主張もある。

李弁護士:チョン・ホソン録取録と関連者証言でもチェさんの国政壟断が確認されているではないか?タブレットPCは国政壟断事態の出発点で崔順実の量刑に決定的な影響を及ぼす。チョン・ホソン録取録は法廷証拠物としての調査がまだ不十分であるにも関わらず、検察が言論に流している(朝鮮日報韓国語版 2017.01.09 03:04)。

以上

(この論考は2017年1月15日付Japan In-depthの記事「デマと誤報暴露で韓国世論変化」を若干加筆し資料を補充したものです)

 
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