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金正日訪中で気になる中朝同盟関係

2010.5.11
コリア国際研究所 北朝鮮研究室

 5月3日から特別列車で中国を訪問していた金正日総書記は7日に帰国した。
  3日に丹東から高速道路を使って乗用車で大連に到着した金総書記は、休息を取った後大連の港湾施設などを視察した。大連で1泊した後、4日に天津に向かい5日午前8時ごろに天津に到着した。天津では張高麗・天津市党書記の案内を受けて、都市計画展覧館や浜海新区の港湾や保税区域などを視察した。
  5日午後2時ごろ、天津を出発した金総書記一行は、乗用車に乗って高速道路を使い北京入りした。午後3時40分ごろ(現地時間)、国賓館の釣漁台に到着した金総書記は、人民大会堂で胡錦涛中国国家主席と晩餐を挟んで4時間半にわたり首脳会談を行なった。両国首脳が会談したのは2006年1月以来のことで約4年4ヵ月ぶりである。
  両首脳は会談で、北朝鮮の6者協議への復帰を前提に中国の対北朝鮮経済支援の規模などについて重点的に論議した模様だ。しかし北朝鮮は6ヵ国協議参加に対する従来の主張を変えなかったようだ。また韓国哨戒艇天安(チョンアン)艦沈没事件については双方でどういう対話があったかも公開されなかった。
  金総書記は 6日午前、宿泊先の釣魚台国賓館を出て、北京市内のバイオテクノロジーや薬品の研究施設を視察した。金総書記が乗ったとみられる特別列車は夕方、北京駅を出発し瀋陽に向かった。瀋陽から丹東までは乗用車に乗って高速道路を使った。
  金総書記に随行したのは、国防委員会副委員長金永春人民武力部長、朝鮮労働党の崔泰福、金己男書記、外務省姜錫柱第1次官、朝鮮労働党の張成沢、金英日、金養健の各部長と朱奎昌第1副部長、国防委員会玄哲海、金明秀局長、朝鮮労働党平安北道金・ピョンヘ責任書記、咸鏡北道テ・ジョンス責任書記たちだ。

1、サプライズのなかった金正日訪中

 これまでの金総書記の訪中は、北朝鮮の内外政策でターニングポイントとなっていた。2000年5月の訪中後には史上初の南北首脳会談(6月15日)が行われ、2001年1月の訪中では「改革開放」へと進むかのような幻想をふりまき、失敗はしたけれど新義州特区構想を打ち上げた。さらに2004年4月の訪中後には2度目の日朝首脳会談(5月22日)を行なった。2006年1月の訪朝では、再び「改革開放」の幻想をふりまき中国の協調を取り付けバンコ・デルタ銀行の資金凍結と金融制裁解除に向けての対米攻勢を仕掛け、7月には「ミサイル連射」、10月には第1回核実験を強行してブッシュ政権の強硬路線を軟化させた。
  しかし今回は、健康悪化や昨年末のデノミ失敗を抱えての訪中であり、3月26日に起こった「天安艦」沈没事件という「テロ疑惑」を抱えての訪中だった。これまでのような対等な外交がきたかどうかは疑わしい。
  米国の見方も冷ややかだ。金総書記が中国を訪問したことについて、オバマ米政権は3日、記者会見など公の場で触れることはなく、現時点では静観する姿勢を貫いている。米国が「米朝関係を正常化するには、まず北朝鮮側にすべきことがある」(クローリー国務次官補)との立場で一貫していることに加え、韓国哨戒艦沈没で北朝鮮の関与説が浮上し、核問題をめぐる6カ国協議の「早期再開は絶望的」との悲観論が主流となっているためだ。
  金総書記の訪中はそもそも、米メディアにはほとんど取り上げられていない。国民の関心はニューヨーク・タイムズスクエアの爆破未遂事件とメキシコ湾の原油流出事故に集中しており、「極東の独裁者による小旅行への関心は皆無に等しい」(米中外交専門家)からだ。米シンクタンク・マンスフィールド財団のゴードン・フレーク所長は「哨戒艦の沈没以前なら、金総書記の訪中は北朝鮮の6カ国協議への復帰を意図するものとして無条件に歓迎されたはず」と分析。また、元国務省東アジア太平洋局上級顧問のバルビーナ・ホワン国防大学教授は、哨戒艦の沈没原因が不明な段階で中国が金総書記の訪問を受け入れたことは、「韓国側よりも北朝鮮側に立つ中国の姿勢を明確に示している」と述べ、広がるばかりの米韓と中朝の溝に危機感を示した(産経2010.5.4 17:21)。
  天安艦沈没事件と関係してはすでに米議会が北朝鮮に対する「テロ支援国家再指定」に動いている(RFAコリア2010・5・7)。

2、首脳会談で話されたこと

 北朝鮮の朝鮮中央通信は8日、中国を非公式訪問した金総書記が、5、6両日に北京で胡錦濤(フー・チンタオ)・中国国家主席と首脳会談を行ったと報じた。
  中朝首脳会談の内容の詳細は分からないが、新華社通信報道や朝鮮新報報道などによると、朝中経済協力問題、朝鮮半島の非核化と6カ国協議問題が論議されたとしているが、天安艦沈没事故問題は未知数だ。
  新華社通信によると、会談で胡錦濤主席は五つの分野で協力することを提案したという。一つ目は、指導者層の交流継続。二つ目は、戦略的疎通の強化。両国は毎回あるいは長期的に両国の内政・外交での重要問題や、国際・地域情勢、党・国家統治の経験など共通の問題について、深度ある意思疎通を図る必要がある。三つ目は、経済貿易協力の強化だ。両国政府の担当省庁は経済協力強化のため、真剣に議論すべきだ。四つ目は、人文交流の拡大。五つ目は、両国が国際・地域問題で協力を強化し、さらなる地域の平和と安定を図ることだ。この五つの提案に対し金正日総書記は全面的に同意した(朝鮮日報2010/05/08)。
  宴会での歓迎の挨拶で、胡錦濤主席が「朝鮮が政治的に安定し経済が発展して人民たちが幸せな生活を享受できることを心より願っています」(朝鮮新報2010/05/08)とした注文にも似た発言を行ったことが印象的だ。

@ 朝中経済協力問題

 新華社通信によると、金総書記が「最近合意した新鴨緑江大橋の建設は、両国の友好協力の新しい象徴だ。朝鮮は中国企業の北朝鮮投資を歓迎する」と述べたという(朝鮮日報2010/05/08)。
  また温家宝総理との会談でも「(両国は)重点協力プロジェクトを積極的に推進し、国境地域のインフラ建設と新しい領域と方式の合作のために総合的に協力することを希望する」と語ったという(朝鮮新報2010・5・8)。
  こうした発言から推測すれば、中国政府が昨年11月に発表した長春−吉林−図們市を結ぶ「長・吉・図開放開発先導区」事業と北朝鮮が今年はじめに発表した外資誘致による「インフラ10カ年計画」を結びつける話が真剣に取り交わされたと思われる。
  この受け入れのため北朝鮮は年初に、国防委員会委員長命令による朝鮮大豊国際投資グル−プの活動保障と国家開発銀行の設立、羅先(羅津・先峰地域)特別市の指定など一連の措置を取った。

A 6ヵ国協議問題

 朝鮮中央通信は、両首脳が「朝鮮半島の非核化実現には、6者協議の関係各国が(北朝鮮の非核化を盛り込んだ2005年9月の)共同声明履行へ誠意ある努力をすることが何よりも重要」との認識で一致したと伝えた。金総書記は「非核化目標を堅持し、対話を通じた平和的解決を追求する基本的立場には変わりがない」と述べたという。
  しかし「停戦協定を平和協定に変えることが6ヵ国協議に参加する前提条件だ」とする北朝鮮側の主張に変化はなかったようだ(朝鮮新報2010・5・8)。北朝鮮は、従来のような北朝鮮の核放棄を中心に議論する6ヵ国協議ではなく、核保有国として核軍縮の6ヵ国協議を求めている。そういう意味では「これまでの6ヵ国協議は終わった」とする主張が貫かれている。

B 天安艦沈没問題討議?

  中国政府は5月7日午前、柳佑益(リュ・ウイク)駐中韓国大使に金総書記の訪中内容をブリーフィングしながら、北朝鮮は韓国海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」沈没事件とは関係がないという立場を中国政府に伝えたと韓国政府関係者が明らかにした。
  この関係者は「中国政府の説明によると、北朝鮮は『天安の沈没はわれわれとは関係がない』と中国に明らかにしたという」とし「しかしこうした話を金総書記がしたのか、別の人物がしたかについては、中国側が詳しく説明しなかった」と述べた。
  しかし中国新華社通信がこの日報じた金総書記と胡錦濤国家主席との対話内容には、「天安」事件に関する発言は全く含まれていなかった。通信は「金総書記が朝中首脳会談で6カ国協議復帰の意思を表した」と報道しただけだ(中央日報、2010.05.08)。

3、いっそう明確になった北朝鮮問題は中国問題という構図

 中朝双方の発表が、韓国軍哨戒艦の沈没事件を無視したことは国際社会の疑念を深めた。姜瑜(チャン・ウィ)中国外交部スポークスマンが7日、「金正日訪中は以前から準備してきた非公式訪問であり計画されたものであり、金正日訪問と天安艦事件は無関係だ」と発表したことは、一見公平に見えるようだが相当に北朝鮮よりの発言だ。
  どの国でも訪問する要人に重大な疑惑が生じた場合、その問題で一定の結果が出るまで延期を要請するのが常識だ。しかし中国はそうしなかった。もしも北朝鮮の犯行だということになれば中国はどう説明するのだろうか。証拠は決定的な直接的・物的証拠だけが証拠ではない。状況証拠を積み上げることでも有罪を宣告することはできる。
  また国家主権を盾に韓国からの異議をはねつけた中国の対応は大国意識の表れと言わざるを得ない。誰を呼ぶかは国家主権といってもアルカイダを呼び入れる国はないだろう。
  また「完全に立証することができる事実が発見されるまでは (南北) 双方は慎重に対応し言葉と行動に注意を傾けなければならない」との姜瑜の注文発言は欠礼を通り越した傲慢以外の何物でもない。
  それにしても李明博大統領の「中国が我々と会う前に北朝鮮と会うのは問題があると思い、北の訪問を後回しにしたと聞いている」(5月7日)との発言は、前述の外交部スポークスマンの発言とはあまりにもかけ離れている。中国とのビジネスが頭にこびりついているためか、訪中した自身の弱腰に対する言い訳か、はたまた中国に対する韓国国民の不満を和らげるための発言かは分からないが、腰が引けていることだけは確かだ。
  今回の会談内容が詳しく発表されていないため、詳細な内容は分からないが、北朝鮮にここまで肩入れする中国に6ヵ国協議を任せていては北朝鮮の核放棄は望むべくもない。
  昨年10月の温家宝首相の訪朝で明確になっていたが、今回の金正日訪中で、北朝鮮問題が中国問題であることがいっそう明確になった。朝中間は一定の対立を抱えているが、それよりも外交安保や経済的利益での利害の結びつきが勝っている。朝中の対立面を過大評価するのは危険だ。
  国際的義務を果たさず国益を優先する中朝の立場が明確となった以上、中国に対する米韓日の対応策も再検討されなければならない。

以上

 
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