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今週のニュース

韓日北朝鮮専門家緊急座談(2)

コリア国際研究所 南北関係研究室

2008.8.9

新東亜 5月号 P212〜227

● 参席者 : 朴斗鎮コリア国際研究所所長 孫光柱デイリーNK 編集長
● 司会 : ソン・ムンホン東亜日報出版局専門記者
● 日時 : 2008年 4月10日
● 場所 : 東亜日報出版局会議室

韓・米・日の本音

朴斗鎮 金正日は戦術家といえるかもしれませんが戦略家ではないと思います。戦術面での勝利にこだわるから戦略的には常に負けています。去る 10年を振り返って見ましょう。金正日は前進しましたか?してないですね。むしろ後退しました。もう使うことができるカードもほとんどありません。1994年頃だけ見ても米国は北朝鮮の内部事情をよく知りませんでした。核を持っているのかいないのかが判断しにくい状態でした。それでは戦略を立てることが困難です。こうした曖昧な状態だったので北朝鮮は交渉で勝利しました。ところで今はどうですか、ミサイルカード、核実験カードまですべて使い果たしました。今北朝鮮に何のカードがありますか。
  私は少し前に‘日本経済新聞’のインタビューでも話しましたが、北朝鮮が崩壊の方に行っていることは間違ありません。しかし激的な事態によって崩壊することはないと思います。何故ならば周辺国が北朝鮮政権の急激な崩壊を望んでいないからです。実はこれが問題なのです。考えてみれば米国は北朝鮮核問題のおかげでどれほど大きな商売をしましたか?MD(ミサイル防御体制)を売って、日本に高いイージズ艦を何台も売ったではないですか。韓国に対してもこの前、駐韓米軍司令官という人が MD 体制を買いなさいと言っていたではないですか。

司会 韓国も PSIに参加して MD体制に加入しなさいというのが米国の隠された本心です。

朴斗鎮 米国のもう一つ利益は、中国に対して‘私たちが基地配置を変えるのは北朝鮮を狙ってのことだ’こんな風に言えることです。中国に口実を与えなくてすみます。
  日本はまたどうですか。日本では今憲法改正問題が少し下火になりましたが、安倍政権の時期には戦後 50年以上触れることができなかった憲法改正問題が公然と提起されました。これはすべて金正日のおかげではないですか。言い換えれば日本が言う普通国家になるためのあらゆる条件は金正日が用意してくれたということです。そんなにありがたい(?) 北朝鮮政権をどうして崩しますか?
  韓国は少し違います。韓国の「金大中・盧武鉉政権」は極端に言えば金正日のおかげで政権を維持した政権です。そんな意味で北朝鮮が先軍政治で韓国を守っていると主張しているのは「太陽政策政権」に限っては少し妥当性があったかもしれません。なぜなら ‘私が金正日とこんなに親しい’ということを政治的に宣伝することがポイントとなっていたからです。それで「金正日に会った」ということがある種自分の政治的格上げにつながると思う風潮もあったではないですか。
  その外、韓国には戦争に対する恐怖心があります。だから金正日政権を崩すことができないということではないですか。ところで黄長Y先生も話していましたが、実のところ金正日は臆病で絶対に戦争を起こせない人間なのです。

北が騒ぎ出した理由

司会 ここまで話が出たので一言付け加えますと、最近になって一部では北朝鮮危機論に対するさまざまな話が出ているようです。
  一つ例を挙げますと、この間、中国が中朝間の中国人民元決済を許可しました。これは中国が北朝鮮地域を‘東北 4省化’しようとしているという論理に発展させることができます。米国は米国なりにこうした中国の動きに対して緊迫感というか危機感を持ったから最近になって朝・米交渉で相当部分譲歩したのではないか、こんな分析もあります。

朴斗鎮 妥当性がある分析です。

司会 そうした分析の背景には金正日総書記の健康問題も変数として作用しています。昨年首脳会談初日の姿を見ながら‘あの人が果して何年堪えることができるか’という疑問を持ったのですが‘すでに北朝鮮の体制疲労現象が限界に来ているのではないか’という気もするのです。

朴斗鎮 さまざまな面を見た時、金正日政権は終わっている政権だと思います。すでに終わっている政権を周辺国が生命維持装置で無理やり生かしているのです。この点を明確にする必要があります。

孫光柱 朴先生のお話どおり金正日は戦術的類型ではあるが戦略的類型ではありません。これは正確な事実です。今北朝鮮の生きる道は開放だけなのに、開放すれば政権が崩れるのでジレンマに陷っているのです。現在金正日政権は企業で言うならば倒産に向かっている中小企業が 月3分の利息を払いながら自転車操業している状況と似ています。それで軍事力でしきりに示威しようとしているのです。事実 1990年代を見ても北朝鮮が対南戦略であのようにうるさく騒ぎませんでした。ミサイル実験をしても騒がなかったし、西海(黄海)挑発にしても前もって騒ぐことはしませんでした。何も言わず打撃を与えて引き上げました。ところがこのごろは ‘われわれは必ず攻撃する、お前たちは戦争するつもりか!’式です。核実験をする時は1年8ヶ月も前に外務省が核保有宣言を行いました。だが核実験は隠密裏に行なってこそ相手にとって最も大きな脅威になります。それをあらかじめ公表するというのは北朝鮮体制が文字どおり空き缶になったということです。

米国が対北食糧支援する時に気をつけなければ

朴斗鎮 それを裏付けることでこんな例もあります。私が日本朝総連で活動する時は金日成時代で、北朝鮮内部情報を手に入れることが難しかったのです。ところが金正日時代にはさまざまな情報がもれ伝わってきました。内部情報が暴露されているのにどのようにして自分を守ることができますか。また米国は去る 10年間にわたって金正日が現地指導する所と別荘を追跡したのですが、その結果現地指導は必ず別荘がある地域で行なっているという結論を導き出したと言います。米国はこんなことまで追跡して捕捉しているのです。

司会 では北朝鮮の米国、中国、日本などに対する対外戦略に対して一言づつお願いします。

孫光柱 現在の状況を見れば、北朝鮮は一定の期間、通米、通中しながら封南することが韓国を手なずけ、後に経済支援をもらうにしても、韓国自ら進んで支援に乗り出すようにする道だと判断しているようです。
  まず米国との関係をよくすることに務めるでしょう。今北朝鮮にとって一番重要なことは米国からテロ支援国解除を受け敵性国交易法のくびきから脱することです。これを勝ち取るために米国との解氷ムードを続けようとするでしょう。しかし去年の 2・13 合意と金桂寛の米国訪問直後に騒いでいた「米・朝国交回復」や「韓(朝鮮)半島平和体制樹立」にまで持っていくのは難しいと思います。それは太陽政策派の‘妄想’に過ぎません。米国としては、核申告及び核施設不能化の次の段階は検証段階と考えているはずです。検証段階だけでもかなり長くかかるはずで、核廃棄 3段階は新しい政権で行なうべきだと考えているはずです。
  しかしこうした過程で北朝鮮が米国から核申告の対価として 50万t の食糧支援を得れば韓国の一部を揺さぶることができます。太陽政策派が‘それ見ろ、北朝鮮と話し合って支援すれば核問題は早く解決する。北朝鮮の通米封南を少なくとも通米通南に変えなければならない’と言うように主張すれば、金正日の対南‘平和税取り立て’がもっと容易になり、何よりも韓国内部で李明博政府の‘非核・開放 3000’を試験台に乗せられることになります。

司会 日本の専門家たちの中にはこれまで数年間、日本の対北政策を批判する人がかなりいたのではないですか?

朴斗鎮 日本の最大の懸案はやはり拉致者問題です。実はこの問題がこんなに大きな問題になるとは日本の政治家たちも考えていなかったのです。前段でお話したとおり 2002年の「金正日拉致謝罪」をきっかけとして 600万人近い人たちが署名するほど大きな問題となりました。それまで日本国民の北朝鮮に対する認識は「幼稚園生」ぐらいだったのです。それに社会主義に対する幻想もありました。‘北朝鮮も人が住む国なのにまさかそこまでは…’とする考えが多かったのです。そういう点では去る 10年間の韓国もよく似ています。ところが「金正日謝罪」をきっかけにして拉致者問題が解決されない限り日本の対北朝鮮関係は一歩も前に進むことができなくなったのです。
  いわゆる ‘無謬性の存在’であった将軍様が謝罪する場面に遭遇し朝総連組職も大きく搖れました。過去には日本国内で北朝鮮に有利な世論操作行ったり、裏金を与えて政治家を操るなどしていた朝鮮総連が、金正日の謝罪以後潰滅的な打撃を受けその勢力を大きく衰退させました。今は子供まで含めても 4万人いるかいないかの水準です。
  一方日本で太陽政策を支持する専門家たちも李明博政府の登場で立場が困難になっています。彼らはその間北朝鮮を安定させて平和を維持するのが関与(engagement) 政策だと主張して来ましたが、韓国の新しい政権が過去と違う方向に進むので、その主張の説得力が低下するようになりました。金正日政権が日本で自分に有利な政策を展開することがとても難しい状況になっています。そうした点で日本も今重要な局面に入ったと思います。韓国では選挙を通じて太陽政策支持派が崩れましたが、日本の太陽政策支持派ももうそろそろ間違いを認めなければなりません。

‘適当な折衷主義’ 警戒しなければ

孫光柱 去る 10年間北側に奪われた南北関係の主導的地位を李明博政府が取り戻さなければなりません。韓国が(乙)から(甲)の位置に移ろうとすれば能動的で実用主義的な政策をしっかりと展開して行く必要があります。実用主義は折衷主義、機能主義を排撃しなければなりません。去る 10年間、韓国の知識人たちは金正日政権を弱化させて北朝鮮を改革開放に向かわせる積極的な平和建設よりも‘現存平和維持状態’に安住しようとする傾向があったし、これを‘平和’だと勘違いしていました。また折衷主義をまともな‘中道主義’と間違って理解する場合も多かったのです。そうした点で南北関係、国際関係で何が私たちの根本利益に合致する基準なのかを正確にうち立てて、損益計算する実用主義が必要です。南北関係で適当な折衷主義は実用主義ではありません。しかし太陽政策派たちが去る 10年間の間違いを認めないために、これまでの主張を変色させたり、またそのまま追い続けたりする可能性もあります。韓国内部の正確な世論作りが非常に重要です。

司会 そろそろ開城工団を含めた南北経協、離散家族、国軍捕虜・拉北者問題など事案別に見る時になったようです。現在のように南北間に硬直局面が続く場合、こうした懸案がすべて影響を受けることになります。北朝鮮としても戦争は即体制崩壊を意味するので対南圧迫水準をそれなりに調整してくると考えられますが、李明博政府は北朝鮮の攻勢に対してどのレベルでいかなる対応に出るべきかを考える必要があります。

朴斗鎮 この問題を考える時、まず北朝鮮の政策策定能力が相当部分低下したという点を勘案する必要があります。過去には北朝鮮が挑発や脅迫行為を行なった時その背景に何があるか分からなかったのでその対応には限界がありました。ところが今はそうではありません。そういう点から見て、北朝鮮のいかなる行動に対してもそれを無視することも良い対応法になるかも知れません。北朝鮮に今残っているカードは ‘言葉’だけです。政権維持のために使うことができるカードはもうすべて使いつくしました。だから北朝鮮が言葉で行なう脅迫を過大評価する必要がないということです。

孫光柱 同感です。核実験をすることで北朝鮮が持っている最大値のカードはもうすべて出てしまいました。もう隠しておいたものがありません。これから北朝鮮が行なう行動も過去のパターンから大きく脱することは出来ないと思います。例えば西海北方限界線(NLL)でのある程度の挑発、休戦ラインでのある程度の銃撃等々です。1999年ですか、北朝鮮が金鋼山観光客を抑留した事件のようなことも考えられるでしょう。そういう事が起っても私たちがびっくり仰天して大げさに対応する必要はないということです。

朴斗鎮 北朝鮮は去る10年の太陽政策期間、ひたすら一つ方法、言い換えれば脅迫をして成功する方法以外には学んだことがありません。その間北朝鮮で大学を卒業して一線に投入された中堅幹部たちも、こうした手段以外に他の方法を知らない世代です。そのような人々が、最近変化した対南環境を、前の状態に戻そうと思えばやはり脅迫以外には考えつかないだろうということです。
  南側は北朝鮮のそのような対南戦略を過大評価する必要はありません。事実主導権が南側に移動する過程はもう始まっているではありませんか。私は離散家族問題にも相互主義を適用しなければならないと思います。金剛山で一度面会すれば次は江原道で面会するとか。こうした方法を提案する必要があります。

いちいち対応するな

孫光柱 国軍捕虜・拉北者問題は重要です。この問題は過去東・西ドイツの事例を援用することができます。当時西ドイツは東方政策を行ないながらも人権問題は一歩も譲歩しませんでした。そして ‘プライカウプ’と言ってお金で東ドイツ政治犯を連れて来たりしましたが、時間が経つにつれて民間ベースでこの事業を遂行しました。そしてお金の代わりに現物を与えたりしました。それで西ドイツの製造業を喜ばせる效果ももたらしました。
私たちも参考にする必要があると思いますが、ここで何よりも重要なのは国民世論です。対国民広報など事前の作業が必要です。
  離散家族と国軍捕虜・拉北者問題はもちろん難しい課題ですがお金だけで解決してはいけない問題だと思います。人権問題としていかに浮上させるかが重要だということです。少し前に韓国は国際舞台で北朝鮮人権決議案票決に賛成票を投じましたが、こうした方法で国際世論を積極的に喚起していかなければなりません。同時に北朝鮮に対しては補償も提起して圧力と対話を並行させるべきだと思います。

司会 そろそろ今日の対談の結論を出さなければならない時間です。李明博政府が北朝鮮をどのように扱うのが望ましいかについて一言づつお話しして下さい。

孫光柱 李明博政府は南北関係で北朝鮮を正常国家に変化させるという目標を持って政策を推進することが重要です。例えば 9・19、2・13 合意での約束を守らないのに北朝鮮に利益がもたらされるようなことがあってはなりません。これまでは北朝鮮が約束を守らなくても彼らが損害を蒙った事はあまりありませんでした。UNの制裁も行ないましたが韓国と中国は北朝鮮を助けたではないですか。
  朴先生もおっしゃいましたが北朝鮮が韓国の新しい政府を試そうとする時いちいち対応せずに無視してしまうのがよいでしょう。また大統領が南北の懸案に対して一つ一つ直接言及する必要もありません。国防部で対応することは国防部が行い、統一部が対応する事案は統一部が対応すればよいのです。またこれからは相手と格を合わせる必要もあります。盧武鉉政府時代、韓国側は統一部長官が北側の権虎雄内閣惨事に相対しましたが、内閣惨事は統一戦線部でヘッドテーブルにも座れない地位です。これからはこんな恥かしい事があってはなりません。
  1990年代初の 1次核危機の時から北朝鮮の目標は韓(朝鮮)半島で緊張を高めて経済支援を得ることだったのです。この悪循環を断とうとすれば、金正日が北朝鮮内部の仕事に没頭するようにする戦術を駆使する必要があるでしょう。直裁的に言えば、国情院が去る 10年間手放していた‘B トラック’の対北オペレーション(operation)です。
  最後に北朝鮮政権に対する基本認識をはっきりと正す事です。北朝鮮体制の特徴は封建的首領絶対主義、軍事暴力主義です。社会主義的要素は残映が残る程度です。ここで一番目立つのが組織暴力団的行動です。組織暴力団は学識高い人を絶対尊敬しません。組織暴力団が一番恐れるのは自分よりずっと強い力を持った相手です。そういった意味で韓米軍事同盟がいかに力強いのかを金正日が肌で感じるようにしなければなりません。戦争をしようという意味ではなく、このようなメッセージを強く投げる必要があります。経済力の活用も重要です。力強い韓米軍事同盟とお金、この二つをよく取り合わせて活用しなければなりません。李明博政府がこれから 5年の間にこの土台を築くことが重要です。

韓国が主導する政策

朴斗鎮 北朝鮮を外部の力で変化させることができるのか?それは非常に難しいというのが去る 10年間の結論です。北朝鮮体制は外部から圧力をかければ内部が結束するという構図を見せて来ました。一方北朝鮮の周辺国もそれぞれの利害関係があるために外部の力で北朝鮮を変化させることは難しいと私は考えます。
  それならば内部で変わらなければならないのですが、北朝鮮住民の意識水準から見てそれはまだ期待しにくい状態です。結局北朝鮮内部で変化の力を育てることができる主体は韓国にしかありません。だから韓国主導の政策を立てなければならないということです。ところが過去盧武鉉政権はこれを‘わが民族どうし’で進めたので国際関係で相当な副作用をもたらしました。そういった点で私は李明博新政府が‘外交安保の枠の中で南北関係を扱う’としたのは適切な姿勢だと評価します。こうしてこそ周辺国に対する私たちの主張を主導的に貫徹する余地が広くなるのです。

司会 長時間、良いお話ありがとうございました。

(終り)

 
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