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「太陽政策」を否定した韓国の民意

コリア国際研究所所長 朴斗鎮

2008.4.15

 4月9日に行なわれた韓国第18代国会議員選挙は、保守系の勝利に終わった。議席数はハンナラ党153議席、統合民主党81議席、自由先進党18議席、親朴連帯14、民主労働党5議席、創造韓国党3議席、無所属25(保守系16、左派系6、その他3)議席となった(全299議席)。保守系を合わせると200議席を越える。これは憲法をも改正できる数字である。
  選挙結果で注目されるのは、親北朝鮮傾向の統合民主党が党首をはじめ大物議員を次々と落選させ、牽制勢力としての100議席にも届かなかったことである。民主労働党の5議席、創造韓国党の3議席、左派系無所属の6議席を加えても95議席にとどまった。
  一方ハンナラ党も安定過半数を阻止された。安定過半数の最低ラインである157議席にも手が届かず、政局運営で親朴連帯との協調を余儀なくされた。親朴槿恵派の議員はハンナラ党内で33、親朴連帯で14、無所属で12の59となり選挙前勢力(40数人)を大きく上回った(親李明博派は62→100)。朴派議員は友好的議員を含めると72人になるとの観測もある。こうしたことから韓国メディアでは今回の実質勝者は朴槿恵議員だとの分析がなされ、選挙結果を黄金分割と評価している。
  その意味は、李明博大統領の独走が許されなくなったこと。大統領選挙勝利の影の立役者である朴槿恵議員を無視できなくなったこと、それでいて統合民主党など親北朝鮮政党からの揺さぶりに耐えられる過半数を一応確保したことなどである。
  しかし投票率はこれまで最低の46%を記録した。前回(2004年)の60.6%を14.6ポイントも下回った。全国規模の選挙で過去最低だった02年の統一地方選(48.9%)よりさらに2.9ポイント低かった。ここに今後の推移を見守ろうとする韓国国民の「民意」が現れている。親北朝鮮左派の政治には懲り懲りだが李明博大統領の政治手法にも警戒が必要だということだ。
  今回の総選挙結果は、経済再生、政治浄化を強く求めるものであったが、対北朝鮮政策においては「太陽政策」の変更を求めるものであった。それは次のような選挙結果に現れた。

1、統合民主党首脳部の崩壊

 北朝鮮との宥和をすべての政策に優先させてきた統合民主党(旧開かれたウリ党)は、孫鶴圭(ソン・ハッキュ)共同代表と鄭東泳(チョン・ドンヨン)候補(旧ウリ党議長)という「看板」を失った。また、鄭候補は昨年の大統領選に続き、総選挙でも敗北したことで政治生命すら危うくなっている。
  かつて民主化運動に携わったグループの代表格だった金槿泰(キム・グンテ)候補(元ウリ党議長)は、学生運動の後輩でニューライトの申志鎬(シン・ジホ)候補(ハンナラ党)に敗れた。また、盧武鉉前大統領の下で政務担当首席秘書官を務めた柳寅泰(ユ・インテ)候補も、ハンナラ党の新人の金善東(キム・ソンドン)候補に約5000票差で敗れた。いずれも、伝統的に左派が強かったソウルの「江北ベルト(漢江以北)」での敗北である。左派の強固な基盤であった「江北ベルト(漢江以北)」の崩壊は、親北朝鮮勢力の退潮を象徴するものだ。
  韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相も、元高陽郡守(郡の首長)の白成雲(ペク・ソンウン)候補(ハンナラ党)に敗れた。また、旧ウリ党の院内代表を務め、今回5回目の出馬となった張永達(チャン・ヨンダル)候補(全羅北道全州市完山区)は、元警察庁長官で無所属の李茂永(イ・ムヨン)候補に敗れた。このほか、国会副議長を務めた金徳圭(キム・ドッキュ)候補も、ハンナラ党の新人の秦聖昊(チン・ソンホ)候補に敗れた。そのほか金大中元大統領の次男金弘業氏も落選し元大統領の影響力衰退を示した。
  旧ウリ党の議長を務めた8人の候補者のうち、今回も当選を果たしたのは文喜相(ムン・ヒサン)、丁世均(チョン・セギュン)の両氏だけだ。臨時議長を務めた林采正(イム・チェジョン)国会議長は政界を引退し、また柳在乾(ユ・ジェゴン)氏は離党して自由先進党に合流した。

2、主思派3・8・6世代と北朝鮮人権問題追求反対候補の落選

 旧開かれたウリ党出身の主体思想派「386世代」(60年代生まれで80年代に大学に通った30・40代の世代)議員も次々と姿を消した。
  17代総選挙で当選した主体思想派「386世代」の議員31人の内、今回の総選挙に統合民主党の候補として出馬したのは23人であったが、当選した候補は、全羅道の姜h正(カン・ギジョン、光州北甲)、徐甲源(ソ・ガプウォン、順天)、京畿道の趙正G(チョ・ジョンシク、始興乙)、崔宰誠(チェ・ジェソン、南楊州甲)、安敏錫(アン・ミンソク、烏山)、康聖鐘(カン・ソンジョン、議政府乙)、仁川の宋永吉(ソン・ヨンギル、桂陽甲)、江原道の李光宰(イ・グァンジェ、太白・旌善・寧越・平昌)候補など約10人だけだ。
  386世代の中核ともいえる全国大学生代表者協議会(全大協−親北組織「韓総連」の前身)の元幹部たちは、そろって落選した。386世代の象徴で3選を狙った任鍾ル(イム・ジョンソク、ソウル城東乙・全大協の第3期議長)、呉泳食(オ・ヨンシク、ソウル江北甲・全大協第2期議長)、報道官の禹相虎(ウ・サンホ、ソウル西大門甲)はすべて落選した。また、最近発言が問題視されていた鄭清来(チョン・チョンレ、ソウル麻浦乙)もハンナラ党候補に敗北したほか、鄭鳳株(チョン・ボンジュ、ソウル盧原甲)、柳基洪(ユ・ギホン、ソウル冠岳甲)、禹元植(ウ・ウォンシク、ソウル盧原乙)、尹昊重(ユン・ホジュン、京幾九里)など学生運動で活躍した議員たちも再選に挑戦したが落選の憂き目をみた。
  17代国会では「全大協出身たちが国会を握っている」と言われるほどだったが、386世代の議員たちが数多く落選したことにより、同勢力の影響力はほとんどなくなった。これらの議員が中心となって進められた国家保安法の廃止運動などは今後下火となるだろう。
  北朝鮮の人権問題追求に否定的だとされた候補の落選も相次いだ。19人中、当選したのは4人に過ぎなかった。
  金・ヒョソク(民主)、白・ウォヌ(民主)、チェ・ジェソン(民主)、李・サンミン(先進)の4人が当選したもののそれ以外の候補(15人)は落選した。特に北朝鮮民主化委員会(委員長黄長Y)が「北朝鮮の人権に対する5人の敵」と名指しした金・ウォンウン(民主)、孫鶴圭(民主)、任・ジョンソク(民主)、チェ・ジェチョン(民主)、任・ジョンイン(無所属)候補はすべて落選した。
  一方それとは反対に北朝鮮人権問題追求で積極的に活動した候補は、朴振(ハンナラ)、申志鎬(ハンナラ)、権ヨンセ(ハンナラ)、羅ギョンウォン(ハンナラ)、沈ジェチョル(ハンナラ)、田麗玉(ハンナラ)、チョン・ジェヒ(ハンナラ)、黄ウヨ(ハンナラ)、黄ジナ(ハンナラ)、ソン・ヨンソン(親朴)、李会昌(先進)、李ギョンジェ(無所属)など15人中12人が当選した。こうした候補は第17代国会で韓国政府の国連北朝鮮人権決議案の賛成を支持し、盧武鉉政権の北朝鮮人権政策を批判した人たちだ。

3、韓国国民の「民意」を見誤っていた一部の北朝鮮ウォッチャー

 日本の一部北朝鮮専門家や「太陽政策支持者」は、李明博大統領の対北朝鮮「非核・解放・3000」政策を「実用主儀」発言と結びつけ「太陽政策」の変種のように主張してきた。だが韓国の政権交代に込められた「民意」はそのようなものではなかった。韓国国民の「民意」はむしろ「非核・解放・3000」よりももっと毅然とした政策を要求している。選挙前の北朝鮮による「戦争脅迫」にもかかわらず今回の選挙で「太陽政策支持勢力」に審判を下した結果がそれを如実に示した。
  しかし静岡県立大学の伊豆見教授は次ぎのように主張していた。
  「10年ぶりの保守政権の誕生だが、対北朝鮮政策の基本線は何も変わるまい。交流や協力の拡大で北朝鮮を安定させ、脅威を低下させる『関与政策』は、誰が大統領でも大きくは変わりようがない。国民の高い支持があるからだ。・・・・首脳会談の直後、盧武鉉氏の支持率は上がった。逆に南北関係を悪化させれば支持率低下を招く。来春の総選挙でハンナラ党は議席を減らすわけにはいかないので、李氏は北朝鮮の核問題での強硬策は現実的でないと判断するだろう」(『朝日新聞』2007年12月20日付)。この分析がいかに的外れであたかを今回の総選挙は示した。
  また北朝鮮問題専門家を自認する辺真一氏は「辺真一のコリアレポート」、3月24日付ブログで李明博政権の対北朝鮮政策を次のように分析した。
  「(李明博政権の対北朝鮮政策で)特に印象深かったのは、『一方的な譲歩はない。無条件の支援はない』『これからは人権も取り上げる。北朝鮮に対して厳しいことも言う』と発言したことです。この発言で太陽政策の変更を願う韓国内の保守派や日米の太陽政策批判派から拍手喝采を浴びました。
  しかし、この1ヶ月で随分様相が変わりました。外相に起用した柳明恒氏は2月27日、国会外交通商委員会人事公聴会で『南北和解と緊張緩和を追求することは、絶対命題だと考えている』と述べ、『北朝鮮に対する和解協力政策(太陽政策)の基調は変えられない。李明博政権でも和解協力政策は継続しなければならない』と発言しました。太陽政策の根本的な路線修正はないと発言したのです」。
  この辺真一氏の主張にいたっては「なにをか言わん」である。「和解協力政策」を「太陽政策」と勝手に規定し、人事公聴会での韓国外相発言を「太陽政策」への回帰と決め付けているのだ。今回の選挙結果でも分かるように韓国国民は無条件に与え続ける「太陽政策」を否定し「相互主義」を求めている。こうした「民意」があったからこそ李明博政権は「統一部」の廃止まで検討したのだ。また「対価」を前提とした「和解協力政策」は「相互主義」の重要な構成部分であることを辺真一氏は知らなければならない。

 韓国国民は10年間の「太陽政策」過程で金正日政権に対する多くのことを学習した。それは@金正日政権をいくら助けても彼らは感謝しないし変化もしないA「太陽政策」は改革開放をもたらすとしていたがそれは幻想だったB金正日政権には毅然とした「相互主義」が必要だC金正日政権の脅迫にいちいち対応する必要はない―といったものである。
  金正日政権がこうした韓国国民の変化を読み取り、新しい情勢に応じた「対韓国政策」を策定せず、これまでのように「脅迫すれば見返りが得られる」とする硬直したやり方や「通米封南政策」で韓国の焦りを呼び起こそうとするならば韓国国民から大きなシッペ返しを受けることになるだろう。
  金正日政権が「民族共助」を掲げ、韓国親北朝鮮勢力との「南北合作」で「連邦制を実現」し、自らの権力を維持するだけでなくあわよくば全朝鮮半島を支配しようとしてきた10年間の野望は、昨年12月の韓国「大統領選挙」と今回の「4・9国会議員選挙」で示された韓国国民の民意によって崩れ去ったと見てよいだろう。金正日政権に残された道は核を放棄し「改革開放」に向かう以外にない。

以上

 
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