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北朝鮮の「端川張り紙闘争」―以前とはっきり変わった

イ・グァンベク デイリ−NK論説委員

2006.9.16

 「先軍政治のおかげで人民は飢え死にする。軍人だけに与えないで、人民にもコメを与えよ」、北朝鮮の市場(いちば)に金正日政権の先軍政治を批判して、コメが欲しいという内容の張り紙が現われた。今年5月に咸鏡(ハムギョン)南道端川(タンチョン)近郊の農民市場に現われたこの張り紙は、想像を絶する思想統制と苛酷な暴力をくぐって咲き始めた抵抗と闘争の息吹である。
 金正日政権は自分の権力を維持するために二つの方法を使う。
 一つは苛酷な暴力である。抵抗はそのまま死を意味する。抵抗した本人だけではなく家族と親戚、先輩、後輩までも命を失うか、耐えられない暴力に苦しめられる。
 もう一つは徹底的な思想的欺瞞である。生まれた瞬間から、頭の中に「首領のために命を捧げるのが最も美しい人間」という思想を叩き込む。首領に反対したり抵抗することは悪魔だと教えられる。そして外部の情報からは完全に遮断される。
 とりわけ、北朝鮮の住民は常に飢えに苦しんでいる。このような状況では、抵抗したり闘争したりすることができるだろうか。このような社会ではレーニンや毛沢東のような人たちも抵抗することができないだろう。毎日、食べ物を探してさ迷う動物のように生きて行くしかない社会が、北朝鮮の首領社会である。それ故、恐怖と絶望の社会に現われた抵抗の張り紙が、涙が出るほど嬉しく貴重なのである。
 端川の張り紙が特に感動を与えるのは、今までの抵抗方式と微妙ではあるが重要な違いを示しているからである。
 2004年11月に会寧(フェリョン)で発見された<自由青年同志会>の反金正日の檄文と比べてみるとその違いがよくわかる。
 第1に、露骨な政治非難の代わりに、住民の切実な要求が盛り込まれている点である。会寧の檄文は、「金正日は独裁者である」、「独裁政権を追放しよう」、「人民よ、戦って自由民主を取り戻そう」などの激昂した政治的主張が並べられていた。一方、端川の張り紙の内容は一言でいうと、「コメがほしい」ということである。北朝鮮の住民の切迫した生存要求が盛り込まれている。切迫した内容だけに強い抵抗力が秘められている。
 第2に、張り紙が張り出された場所も違う。会寧の檄文は、村の入口の静かな橋と工場の奥まった片隅にあった。一方、端川の張り紙は、人の往来が激しい端川駅の近くの農民市場に張り出された。北朝鮮の住民に見せるために張り出されたのである。外部に伝えるのが目的ではなく、内部の住民に知らせて、彼らの支持を得ることにその目的があったとみられる。
 第3に、端川の張り紙をめぐって、住民が意見の交換を行い、一部住民は張り紙の内容に同感まで示している。会寧の檄文の場合、住民が檄文を見たことさえ確認されなかった。張り紙を張り出し、張り紙を見て意見を交わし、張り紙の内容に共感する行為は、今までの北朝鮮の住民からは想像し難い行為だった。
 抵抗という想像を超えた現象が北朝鮮社会で発生していることには、二つの要因が作用している。
 第1に、北朝鮮の住民が生き抜くうえで出口の無い路地に追い込まれたことである。
 最近、北朝鮮に大人の流浪者が増えているという。家にいると、月給なしで働かなければならないし、監視もされる。また配給も途絶えて久しい。これ以上、家と生活基盤を守れないというのである。北朝鮮の住民は、あちこちを流浪して生命を維持するのがかえって楽な状況にまで追い込まれたのである。端川の張り紙は、これ以上我慢できない状況に追い込まれた北朝鮮の住民の、生存のための最後の身もだえといえる。
 第2に、金正日独裁の統治力の弱体化を垣間見せた現象である。
 反金正日の張り紙が貼り出され、住民がそれを見て意見を交換する事態が発生したこと自体、金正日体制の二大統治手段である強力な思想統制と残忍な暴力の力が衰えていることを証明している。少なくとも北朝鮮の住民の悲痛な身もだえが次第に表面化し、より深刻な局面へと移行しているように思える。
 恐怖と絶望で固めた首領独裁の岩を突き抜けて咲き始めた端川の張り紙闘争をわれわれは支持する。彼らの素朴な闘争が、また別の抵抗と闘争の種を巻いていくことに期待する。
 遠くない時期に、北朝鮮の住民と韓国の民主勢力が力を合わせて金正日独裁政権を崩壊させ、北の地にも民主政府樹立のその日が訪れることを信じてやまない。

 
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