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国連安保理「対北朝鮮決議案」の採択と朝鮮半島情勢

2006.7.25

国連安全保障理事会は7月15日(現地時間、日本時間16日未明)国連本部で全体会議を開き、北朝鮮のミサイル試験発射を糾弾し、国連会員国に北朝鮮のミサイル開発を監視する一方、北朝鮮製ミサイルおよびミサイル関連物品や技術を購入しないよう要求する内容の対北朝鮮決議(安保理決議1695)を採択した。
決議案は、イギリスとフランスが日本および中国が提示した決議案素案の内容を調整し、核心争点である「国連憲章7章によって」という部分を削除した折衷案として上程したもので、15理事国が満場一致(15−0)で成立させた。
この決議案採択に対して北朝鮮は朴吉淵(パク・キルヨン)国連駐在北朝鮮大使を通じ「安保理決議を全面的に拒否する」とし、自衛力強化のためにミサイル発射を続けると反発した。
今回の決議案は、「国連憲章7章によって」という部分を削除したもので、軍事的制裁条項は含まれていないが、「議長声明」などと違って「拘束力」を持つとの解釈が一般的なだけに、米国や日本の対北朝鮮政策「カード」とはなりえる。しかしこれだけで北朝鮮のミサイル開発や核開発を阻止するのは難しいだろう。

1)決議案採択の特徴と背景

 今回の「決議案」採択で特徴の第一は、提案から採択までの全過程において日本が積極的に動いたことだ。
日本は1956年に国連に加盟して以来50年目にして初めて主役を演じたことになる。北朝鮮のミサイル発射は、日本に「ミサイル迎撃システム(MD)」構築の名分を与えただけでなく、国際社会の檜舞台にのぼるチャンスをも提供した。麻生外務大臣が「金正日に感謝する」と語ったのは本心かも知れない。
特徴の第二は、日本が初めて主導権を手にした対北朝鮮決議案に、中国が欠席、棄権、という消極的是認ではない最も積極的な「賛成」という選択をしたことだ。北朝鮮をかばいながら米国との関係も悪化させたくない中国の微妙な距離感が読み取れる。
16日にロシアで開かれた第32回主要国(G8)首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)でも胡錦涛主席が同決議案への支持を再確認した。そしてブッシュ大統領は胡錦涛主席に「指導力に感謝する」と語った。さらに中国は、北朝鮮が6カ国協議復帰を拒み続ける場合、北朝鮮を除く5カ国協議を開くことにも肯定的な姿勢を見せたという。
特徴の第三は、米国が日本の後ろで動いたことだ。これまで北朝鮮問題では、米国が主導し日本がそれに追随する形をとってきたが、今回は逆の形をとり、一時は日本が突出しすぎて孤立するのではとの観測まで流れた。しかし米国は後ろで中国に対するプレッシャーをかけ続けるとともに、ブッシュ大統領はG8中も「小泉に恥をかかせるな」と指令を出し、首相官邸とホワイトハウスの間に前例のない直通ラインまで構築した。そしてスティーブン・ハードレーホワイトハウス安保補佐官と「安倍官房長官」との緊密な連携を保った。
米国が日本の後ろで動く形をとったのは、イラク、イラン問題やイスラエルの「ヒズボラ」(レバノン)攻撃などで、北朝鮮よりも中東に比重を置かなければならない状況があったからだと思われるが、そうした形を取ることの方が中国に対するプレッシャーをかけやすかったのだろう。
米国の情報筋によると、中国が「決議案賛成」に回った背景には、米国が中国に対して「北朝鮮の核とミサイルをコントロール出来なければ、日本の核武装を押さえ込めないかも知れない」とプレッシャーをかけたからだという。これが事実かどうかは別にして、「北朝鮮のミサイル連射」が米日を刺激し、北東アジアの軍事バランスを壊しかねないとする中国の判断が働いたことは確かだろう。
現在、中国は経済の高度成長を「総路線」として定め、2008年の北京オリンピックと2010年の上海万博をステップにして米国に比肩する「超大国」になろうとしている。そのためには、当面米国との一定の良好な関係が必須だ。だから北朝鮮が過度に米国を刺激しすぎた時いつも「警告」を発している。どちらにしても今回の決議案通過によって北朝鮮に対する国際的圧力が促進されたことは間違いない。

2)北朝鮮の対応−韓国への揺さぶりとブッシュの任期切れ待ち

北朝鮮外務省は16日、同国のミサイル発射問題と関連して国連安全保障理事会が15日に採択した「決議」に対して、@国連安保理「決議」は、米国の対北朝鮮敵視政策の所産である。それゆえこれを強く糾弾排撃し拘束も受けない。A米国の敵対行為によって最悪の情勢が到来している状況のもとで、手段と方法の限りを尽くして自衛的戦争抑止力を各面から強化していくとする内容の声明を発表し、「決議案」を全面的に排撃する姿勢を明らかにした。しかし一時危惧された後続の「ミサイル発射」は行われていない。
北朝鮮の対応で注目されるのは金正日国防委員長の動向であるが、ミサイル発射後その動きが止まっている。彼の動静はミサイル発射(7月5日)直前の4日に「ロシアの民族舞踊団の公演観覧」などが伝えられたのを最後に北朝鮮の報道から途絶えた。多分、受身に立たされているため米国の動きを見てからということだろう。
金正日の動向が見えない中で、この間北朝鮮を一番かばった韓国に対してだけは、強行策を打ち出している。局面打開のため韓国に矛先を向けていると思われる。
韓国政府は、11日から釜山で行われた閣僚級会談で北朝鮮が6カ国協議に復帰しなければ、コメ50万トンと肥料10万トンの追加支援は行わないと発表したが、これに対し北朝鮮代表団は「慎重に検討する」とし、スケジュールを1日繰り上げ帰国してしまった。その後19日、南北離散家族の再会事業、8月15日のテレビ画面上での再会行事、金剛山面会所の建設などをすべて中止すると発表した。これまでも北朝鮮は何かにつけ離散家族の再会中断、あるいは延期をカードとして使用してきたが、今回もこのカードを真っ先に切り韓国に揺さぶりをかけてきた。
韓国を揺さぶり、韓国を走らせることで有利な局面を作り出そうとするのは北朝鮮の常套手段であるが、今回はそうなるかどうかは分か分からない。韓国の世論動向が厳しくなっているからだ。
金正日は韓国に揺さぶりをかけ突破口を見つけ出そうとする一方で、ブッシュ政権交代を待つ持久戦法に出ている。当面米国の中間選挙結果が出るまでは、六カ国協議にも出てこない可能性が高い。
また持久戦に持ち込むためには国内を結束させなければならない。北朝鮮は「国連決議案」が採択されるやすぐさま国内の体制固めに入った。
韓国の「中央日報」は19日、国連安保理で対北非難決議が全会一致で採択される数時間前の16日午前0時、北朝鮮で金総書記の命令による「戦時動員令」が発動されたと伝えた。「戦時動員令」は誤報との報道もあったが、そういう方向に動いていることは確かだと思われる。ここから第2の「「苦難の行軍」説が浮上している。韓国のある北朝鮮専門家は、再燃し始めている北朝鮮国内の「食糧危機」と国際的孤立からみてその可能性は十分ありうると指摘した。

3)米日の金融取締り強化と北朝鮮に厳しくなる韓国世論

米日の締め付け強化

アメリカのスチュアート・リービー財務次官は16〜18日に訪韓し、クリントン政権時代に一部緩和した北朝鮮制裁措置を元の状態に戻す意向を韓国政府に通知した。
米政府は2000年、北朝鮮が長距離ミサイルを追加発射しない代わりに、戦略物資を除く一般商品の輸出入容認、農業・鉱業・道路・港湾・観光などへの投資容認、アメリカ人の対北朝鮮送金容認、船舶・航空機による一般貨物の対北朝鮮輸送の容認などを行っている。
韓国政府関係者は「第1次核危機解決の過程で生まれた米・朝交渉の結果が白紙化されたもの」と述べた。2004年の場合を見ると、北朝鮮はアメリカから2375万ドル(約27億7500万円)相当の物品を輸入し、150万ドル(1億7500万円)相当を輸出したという集計が出ている。
またリービー次官は、北朝鮮へ現金が流入する開城工業団地や金剛山事業にも関心を寄せており、この問題を米国と韓国政府がどう折り合いをつけるかに多大な関心が集まっている。
18日(現地時間)、米ワシントンのレイバーン下院議員会館で開かれた「韓米議員外交協議会」の記者会見場で、米国側会長のエド・ロイス議員(共和党)も、「北朝鮮が開城工団で得た資金をどこに使うかが重要だ」と述べ、北朝鮮政府が開城工団を通じて得た現金利益を、ミサイルなどの大量破壊兵器(WMD)の開発に転用することを憂慮した。
ブッシュ政権当局者も最近、「北朝鮮のようなテロ支援国で生産された製品を無関税で米国に輸入するには、テロ関連法の3法を改正しなければならない」とし、「これは議会が受け入れられないことだ」と述べた。既存の法律との衝突のため、開城工団の製品を韓米自由貿易協定(FTA)交渉に含めることはできないという意味だ。
米国務省のヒル次官補も20日、米上院外交委員会の公聴会で証言し、北朝鮮に対して「経済、(大量破壊兵器の)拡散対策、外交面で数多くの追加的措置をとる」と述べ、制裁を強化する方針を示した。公聴会後には記者団に対し、28日の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議に合わせ、北朝鮮をのぞく5者協議を開く案に前向きな考えを示した。
 日本政府も7月5日の安全保障会議で9つの対北朝鮮措置と3つの国際社会における連携を決定した。
その他総務省は6日、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の関連施設がある東京都と138市町に対し、施設への固定資産税を適切に課税するよう求める文書を自治税務局長名で出した。同時に今年度、施設への減免措置を実施したかどうかの実態調査を行った結果、20日現在、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の関連施設がある自治体のうち、24市が今年度から固定資産税の減免措置を廃止または縮小するなど、見直しを行ったことがわかった。05年度まで全額減免していたが、今年度から減免をやめた自治体も千葉、盛岡、高知、宮崎など8市ある。これで、何らかの減免措置をとっている自治体は、05年度の98市町から85市町に減った。
一方安倍官房長官は18日、「安保理決議を受けて、金融資産の移転規制に関する必要な措置を適切に実施していく」と語り、金融制裁を発動する考えを示した。当面は核やミサイル資金に関係する個人や企業の「ブラックリスト」の作成から始める方針だという。

北朝鮮に厳しくなる韓国世論

 朝鮮半島の「平和」を最優先して来た韓国世論も、このところの北朝鮮の言動には反発を強めている。とくに11日から開かれた釜山の南北閣僚会談で、北朝鮮代表団が「先軍政治で南は守られているためコメ50万トンを差し出せ」と主張し韓国国民をあきれさせた。
三大放送局の一つであるSBSがミサイル発射二日後の七日、調査専門機関TNSコリアに依頼して全国の成人男女約一千人を対象に実施した世論調査によると、「既存の対北政策を強硬策に変えるべきだ」と回答した人は全体の60・7%に達した。またKBS第1ラジオが同じく全国1000人を対象に行った世論調査では、「対北融和政策は維持すべきだ」がミサイル発射直前の4日には58・7%だったのが、発射後の11日には49・8%と9ポイントも低下した。
また対応が鈍かった韓国政府についても、「政府の対応は間違っていた」とする世論が多いことが分かった。世論調査機関ハンギルリサーチが七日、8日の2日間にわたり全国の成人1000人を対象に実施した設問調査の結果、「非常に間違っていた」(28・4%)、「やや間違っていた」(44・1%)など、70%以上が韓国政府のミサイル発射に対する対応を批判的に見ていることが判明。しかも調査対象のうち与党・開かれたウリ党の支持者の62・6%が「間違っていた」と回答した。
北朝鮮がミサイルを発射した後、日本メディアは「韓国は静か過ぎる」と訝ったが、韓国の一般国民は日本国民と違った反応を示しただけだ。日本国民は「怒った」が韓国国民は「あきれ返った」のだ。北朝鮮との休戦状態の中で半世紀過ごした国民と「平和」の中で半世紀を過ごした国民の「差」はあって当然だと思われる。
韓国国民の盧武鉉政権に対する失望は「絶望」に変わりつつあり「太陽政策」に対する失望は日増しに深まっている。金正日をかばってきた韓国政府は、米国との板ばさみだけでなく韓国国民との板ばさみに遭遇している。

4)カギ握る中国の動向

今回中国は北朝鮮の意向を退ける形を取ったが、その本気度はまだ分からない。北朝鮮と打ち合わせた上で、北朝鮮の意向を無視した形を取っているかもしれない。それほど中・朝のつながりは固いと見るべきだろう。ミサイル発射も中国に通報していた可能性が高い。
それ故、今回中国の取った行動を過大評価してはいけないであろう。
ただ米・中間のチャンネルもある程度構築されており、今回の国連安保理決議でも作動したことは否定できない。
今後中国がこうした「バランス」を取りつづけることができるか否かが注目されるが、中国を米・日側にひきつけるためには、より強力な圧力が必要となるだろう。ここで問題になるのは中東情勢の行方だ。米国がイラクをはじめとする中東で苦戦する限り、中国を北朝鮮から引き離すのは難しいと思われる。

 
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