hedder
headder space1 headder space2 トップページ サイトマップ
HOME  >  デイリーNKニュース  >  今週のニュース
北朝鮮研究
南北関係研究
在日社会研究
在日経済研究
朝日・韓日研究
朝米研究
民主主義研究
コラム
資料室
研究所紹介
 

今週のニュース

時論
狂い始めた金正日の対米、対南戦略

コリア国際研究所所長 朴斗鎮
2006.6.27

「テポドン2号」が発射準備に入ったものの、米国の強硬姿勢と中・ロをはじめとした国際世論の総反対を受け、金正日政権はかえって自らの首を絞めてしまったかに見える。追い詰められるたびに「戦争瀬戸際政策」で米国から譲歩と代償を獲得し、「反米」で中国とロシアを味方につけ、韓国からは莫大な援助をせしめることで「危機の回避」を図ってきた金正日政権は、今回のテポドン騒動で袋小路に入ろうとしている。

追い詰められ「賭け」に出た金委員長

 北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を発射する可能性があると報じられ始めたのは5月初旬である。「液体燃料の注入が完了した」として発射が危惧されたのは6月18日〜20日であった。
しかし既に1週間以上が経過した今もまだ発射は行われていない。「テポドン2号発射作戦」は単なる揺さぶりであったのだろうか。諸般の状況を見た時そうでない可能性が高い。
金正日政権は今、経済的にも政治的にも追い詰められた状態だ。ここからの脱出を「テポドン2号発射」に求めたとしても不思議はない。
昨年米国政府は偽ドル札に絡むマネーロンダリングの証拠を提示し、マカオにある銀行「バンコ・デルタ・アジア」と米金融機関との取引を禁止した。これを受けて、マカオ当局は同行の北朝鮮関連口座を凍結した。その額は約2千4百万j(約27億円)にのぼり、その中には金正日の個人資産も含まれていたといわれている。
この資金の凍結もさることながら、最大の打撃は、それ以降世界の主要金融機関が北朝鮮口座の凍結措置に出たことである。これによって偽ドルの「洗浄」が出来なくなったばかりか、北朝鮮にとっては「血液」とも言える外貨が入ってこなくなってしまった。
さらには北の手持ちのドルまで疑われることとなり、軍需品や「金正日用品」の調達まで難しくなった。そればかりか、余った偽ドルが国内に滞留し、国内経済にも悪影響を及ぼすなどの副作用まで現れた。こうしたことを示す顕著な例としては、金正日m金日成(キム・イル・ソン)の誕生日に毎年与えられてきた贈り物が、今年は渡せなかったことをあげることができる。
また、今の北朝鮮は中国と韓国の「太陽政策」による援助で支えられているところが大きいのだが、5月31日の韓国統一地方選で与党ウリ党が惨敗した結果、このままでは来年末の大統領選で太陽政策反対派の大統領が誕生する可能性が出てきた。こうなっては金正日政権の生命維持装置にまで影響が出てくることとなる。
金正日国防委員長はこうした行き詰まった状況を打開するため、ミサイルによる「脅し」で米国を二国間協議に応じさせ、ダメージの大きい「金融取締り」を解除させることで守勢に追い込まれた形勢を逆転しようと企図したのだろう。

金委員長の大きな誤算

 しかし、結果的に米国を始め、各国はまったく譲歩の姿勢を見せていない。中国やロシアですら反対しており、国連事務総長も中止を呼びかけた。日本では麻生太郎外相が「(ミサイルが発射されたら)直ちに国連安保理の開催を要求する」と発言。アメリカのライス国務長官も、「(発射があれば)次の段階の措置を協議するのは明白。極めて深刻な事態と受け止められる」と強気な姿勢を打ち出すなど、北朝鮮に対する世論は一気に硬化した。こうしてみるとミサイルによる脅しが通用すると思ったのは、金正日国防委員長の誤算であったとしか言いようがない。
金正日国防委員長は外交では常に「強硬には超強硬で対応する」という姿勢をとってきた。これは彼特有の性格に起因するのかも知れない。これまでは確かにそうした「瀬戸際外交」で一定の成功を収めている。
韓国に対しては、ことあるごとに「(戦争になれば)ソウルは火の海になるだろう」「ハンナラ党が政権をとれば戦争になる」などと脅し、金大中大統領以後の「太陽政策」を「民族どうし」というスローガンでコントロールしてきた。
また米国に対しても、「核開発を断念する見返り」としてクリントン政権から年間50万dの重油の援助を引き出したし、98年にはテポドンを日本海に向けて発射することで、発射凍結の見返りに米国から経済制裁の緩和を勝ち取っている。日本からも多くの食糧援助を引き出した。
しかし、いつまでも同じ手口が通用する訳ではない。特に、今回の「金融取り締まり」は米国の国内法によるものであり、核問題解決の国際的枠組みである「六カ国協議」と取引する問題ではない。中国といえども米国の国内問題に口は出せない。勿論韓国政府もそうだ。
追いつめられた金正日委員長が、かつての成功体験が忘れられず、「超強硬戦術」に出たのはよいが、あまりにも的はずれな面がある。せっかく六カ国協議を4対2の有利な構図に作り、援助引出しのカードにまで仕上げたにも関わらず、今回のミサイル騒ぎでそれを自ら捨てようとしている。 
「太陽政策」で北朝鮮を支えてきた韓国政府までも、「ミサイルを発射すれば(コメや肥料の)支援問題に影響する」と発言。北朝鮮に対して厳しい姿勢を見せ始めている。27日から予定されていた金大中元大統領の訪朝についても、ミサイル問題の影響で延期されてしまった。ミサイル問題の落とし所として利用しようとしていた金大中訪朝は大きく目算が外れただけでなく、盟友に深い痛手まで負わせることとなった。

  一発逆転を狙った「セットプレー」は、監督の采配ミスで敵にボ−ルがわたり、カウンター攻撃を食らっているといったところか。本来ならば監督交代といったところだが。



 
著作権について

COPYRIGHT©Korea International Institute ALLRIGHT RESERVED.
CONTACT: info@koreaii.com