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2006.5.21

朝鮮総連と民団の「和解」と展望

朝鮮総連中央代表と民団中央代表間の会談が5月17日、朝鮮総連中央会館(東京都千代田区富士見町)で行われ「共同声明」が発表された。共同声明の内容は次の通りである。
 1.朝鮮総聯(民団)と民団(朝鮮総聯)は両団体の和解と和合を成し遂げ、在日同胞社会の民族的団結のために互いに力をあわせて協力していくことにした。
 2.朝鮮総聯(民団)と民団(朝鮮総聯)は6.15北南共同宣言を実践するための民族的運動に積極的に合流し、6.15民族統一大祝典に日本地域委員会代表団のメンバーとして参加することにした。
 3.朝鮮総聯(民団)と民団(朝鮮総聯)は8.15記念祝祭を共同で開催することにした。
 4.朝鮮総聯(民団)と民団(朝鮮総聯)は昨今、在日同胞社会で民族性が希薄化し失われる現象が増えている深刻な現実に目を向け、民族性を固守し発揚させるために新しい世代の教育と民族文化の振興などの事業に共に努力していくことにした。
 5.朝鮮総聯(民団)と民団(朝鮮総聯)は同胞社会の高齢化、少子化対策をはじめ諸般の福祉活動と権益の擁護、拡大のために互いに協調していくことにした。
 6.朝鮮総聯(民団)と民団(朝鮮総聯)は以上の合意事項を履行し、両団体の間で提起される問題を解決するために窓口を設置して随時協議していくことにした。

  *朝鮮総連と民団の表記順序は、それぞれの団体により逆である。括弧内は民団側の順序。

民団・総連トップ会談は今回が初めてではない。1961年2月と3月にも4・19後の本国政治状況の変化を受けて会談が行われている。この時は、総連側が消極的姿勢を見せて挫折した。
また1972年に南北が「7・4共同声明」を発表し、南北統一の機運が盛り上がったときは、朝鮮総連東京本部と民団東京本部が8・15解放27周年を記念して共同でこの声明を支持する大会を開いた。この時、民団中央は朝鮮青年同盟と共同声明支持の大会を共催した韓国青年同盟と韓国学生同盟の認定を取り消し、東京都本部を直轄にした。しかし中央機関同士が共同声明を発表したのは今回が初めてである。

会談成立の背景

この会談成立の背景には、2000年6月の南北共同宣言の流れがあるが、何よりも来年の韓国大統領選挙に向けた盧武鉉政権と金正日政権の「民族共助」体制の強化をあげることができる。
盧武鉉政権と金正日政権は、すでに「運命共同体」となっている。金正日政権にとっては、韓国における親北政権の長期執権化が政権維持の前提であり、韓国左派勢力にとっては金正日政権との共助体制が政権維持の要となっている。
ところが、最近の世論調査では、盧武鉉政権と開かれたウリ党の支持率は引き続き低迷しており、ハンナラ党の支持率は上昇している。ソウル市長選をはじめとする5月31日の地方選挙予想は軒並みハンナラ党有利である。
東亜(トンア)日報とコリア・リサーチセンター(KRC)が、4月30日から5月2日まで、全国16市・道別の19歳以上の有権者500人ずつ、合わせて8000人を対象に実施した電話世論調査の結果、野党ハンナラ党候補は、全国の16市・道知事選地域のうち、ソウルや京畿(キョンギ)、釜山(プサン)など首都圏と嶺南(ヨンナム)圏はもとより江原(カンウォン)、忠清(チュンチョン)南・北道でも、ハンナラ党候補が1位を占めた。
与党ウリ党の候補は大田(テジョン)や全羅北道(チョンラプクト)、民主党候補は光州(クァンジュ)や全羅南道(チョンラナムド)のそれぞれ2地域で、無所属候補は済州(チェジュ)の1地域で1位と調査された。
勿論この傾向は、ハンナラ党が立派だからというわけではなく、あまりにも与党ウリ党が嫌われているからだ。この韓国地方選挙に与党が大敗すれば、来年の大統領選挙で左派勢力の権力維持が危うくなる。
こうした状況に危機感を募らせた金正日政権は、金大中訪朝受け入れや南北鉄道の連結など南北融和ム―ドの醸成に乗り出す一方、ハンナラ党に投票すれば再び「戦争」が起こる(16日、北朝鮮インタ―ネットサイト、19日朝鮮中央通信)と脅迫するなどあらゆる手段を動員して盧武鉉政権支援に乗り出した。5月20日に野党ハンナラ党の朴槿恵(パク・クネ)代表が刃物を持った男に襲われ負傷した事件はこうした左右対立の険しさを反映したものであろう。
一方、盧武鉉政権も5月9日モンゴルで、経済的混乱が深まる北朝鮮の状況を支援するため制度的、物質的支援を無条件に行うとの意思を表明し、南北首脳会談にも「核抜き」で応じる用意があると一層の北朝鮮支援に乗り出す姿勢を鮮明にした。
本国政府に従属する民団と朝鮮総連の両団体が、南北が進める「民族共助」体制に入ることは時間の問題と見られていたが、南北政権が一層の「共助体制」を打ち出したことで「和解」演出を急ぐこととなった。

今後の展望

 朝鮮総連と民団が今回「和解」したとはいえ、在日同胞の意向というよりは本国の意向を反映したものであるため、本国の政治状況如何で「反転」もありうる。
朝鮮総連と民団の「和解」イベントは、1990年代以後だけをみても双方連絡機構設置の合意(90年8月)、千葉・世界卓球選手権の南北単一チーム共同応援(91年4月)、解放50周年合同文化公演合意(95年)などがあったが、いずれも一過性に終わっている。今回は本国の「南北共助」体制が整っているためそうはならないと思いたいが、両団体とも、本国の従属機関であるため、もしも韓国に保守政権が誕生し、「南北共助」路線が壊れることとなれば、またもや過去と同じ道を進むこととなるだろう。
次に民団内部での対立が予測される。
今回の「和解」にあたり、朝鮮総連側は、3つの条件を提示したと言われている。それは@地方参政権獲得運動の中止A脱北者支援センターの廃止B本国墓参団事業の廃止である。
これに対して民団は@以外のAとBを中断することにした。この決定は民団地方本部には周知徹底されていなかった模様だ。
そのため、民団長野本部は5月17日、民団中央の「脱北者支援」中断に対して反発し独自支援を打ち出しており、5月18日山梨県甲府で緊急に開かれた「民団関東地域協議会」では、12都県の地方本部団長から「脱北者支援中断」と総連に追随する形での「6・15民族統一代祝典」に対して強い反対が表明された。また大阪と名古屋などの地方本部でもこの日、緊急会合を開き「中央本部の決定に従えない」と決議したという。人権と人道問題を政治的取引の道具にした民団中央の稚拙なやり方に非難が集まるのは当然のことだ。今後民団内部での「太陽政策支持派」と「反対派」の対立は鮮明になるものと思われる。
それを裏付けるようにこの日、東京の民団中央本部と各地方本部の事務所には 「朝鮮総連に屈服した現執行部は辞職しろ」などの抗議電話が、一日中鳴り止まなかったと関係者は伝えた(朝鮮日報)という。
第三に、この「和解」によって若い世代を中心とした在日同胞の両団体離れが促進されることだ。
現在在日同胞が求める組織は本国から距離をおいた「在日のための自主的組織」である
民団は今、「改革民団」の看板を打ち出しているが、その中身は「本国支援金確保と増額」のための本国従属強化の方向である。これは在日同胞が求める「自主的団体」の方向とは逆行している。大多数の在日同胞はこの面で失望している。両団体が、今回再び本国志向を再確認したことで、若い世代を中心とした「組織離れ」は加速するだろう。
最後に朝鮮総連であるが、今回の和解で得たポイントは多い。民団の「反金正日」行動を押さえ込み、民団を利用した対日対南工作が可能となった。また、危機的な状況にあった組織建て直しにも利用できる状況が生まれた。しかし、在日同胞は朝鮮総連を見限っており、これで組織が再生するとは考えづらい。むしろ幹部が公然と民団幹部と交流できる状況が生まれたことで、タガが緩んでいる組織の瓦解を促進する可能性がある。
どちらにせよ多様化する在日社会を、再び政治課題で「一本化」することは不可能である。また在日同胞が願っているのは本国従属ではない。両団体の「賞味切れ」は今回のイベントで一層明確となったといえる。

 
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